Pearl Jam 2人のギタリスト:Stone Gossard と Mike McCready の軌跡[記事公開日]2024年11月19日
[最終更新日]2025年05月7日

Pearl Jam
Pearl Jam「MTV Unplugged -Digi- 」

初期グランジから現代へ進化を続けるパール・ジャム。その中心で奏でられるストーン・ゴッサードとマイク・マクレディのギターサウンドは、ファンの心を揺さぶり続けてきました。2024年、通算12作目『Dark Matter』の世界同時リリースが発表され、バンドは再び新境地を切り開こうとしています。

そんな今こそ、2人のPearl Jam ギターに焦点を当ててみましょう。本記事では、歴代アルバムや楽曲を通じて両ギタリストの役割分担と奏法、機材を追い、読者に演奏のヒントと感動をお届けします。

2人のギタリスト:役割とスタイル

ストーン・ゴッサード(Stone Gossard)

ストーン・ゴッサードはパール・ジャムのリズムギタリストです。幼少期からブラック・サバスやレッド・ツェッペリンなどのヘヴィロックを愛聴し、その影響を色濃く反映したパワフルなコードプレイで曲を支えます。彼の使用楽器はフェンダーのストラトキャスターやテレキャスター、ギブソン・レスポールなど多岐にわたり、クリーンなアルペジオから歪んだギターリフまで振れ幅の大きいトーンを作り出します。

演奏スタイルは堅実で安定感があり、特に低音弦のオクターブ奏法や重いドライブで貫くリフはPearl Jamサウンドの土台となっています。ライヴでは2本のギターを用いたユニゾンプレイや、ゴッサード自身がボディを叩くパーカッシブな奏法も見られ、バンドに独特の躍動感を与えてきました。いつでも“リズムの要”として、縁の下の力持ち的な役割を担っています。

マイク・マクレディ(Mike McCready)

一方、マイク・マクレディは同バンドのリードギタリストです。ブルースの血筋を引く彼はスティーヴィー・レイ・ヴォーンに憧れ、1959年製のフェンダー・ストラトキャスターを愛用します。そのギターからはジミ・ヘンドリックスやザ・フーのピート・タウンゼントを彷彿とさせる、情熱的でメロディアスなソロが生まれます。マクレディのソウルフルで感情豊かなプレイスタイルはパール・ジャムのサウンドに生々しくパワフルなエネルギーを吹き込みます。


フェンダーから2023年にリリースされたシグネチャーモデル「Mike McCready Stratocaster」

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彼の引き出しは広く、フェンダーのストラトキャスターやテレキャスター、ギブソンのレスポール、SGといった幅広いギターを使い分けることで、多彩な音色を楽曲に投入します。曲中では歌メロを邪魔しない絶妙なタイミングでフレーズを挿入したり、弦を撥ねるミュート奏法でリズム感を強調するなど、リードといいながらもアンサンブルを意識した演奏が特徴です。

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アルバム別に見るギターワークの変遷

1990年代初頭

『Ten』(1991)

デビューアルバム『Ten』(1991)では、ゴッサードの骨太なリフとマクレディの情熱的なソロが強烈なコントラストを生み出しました。例えば「Alive」では、ストーンが奏でる下降するコード進行に対し、マイクがエース・フレーリー風のビブラートを効かせた壮大なソロを重ねて曲を締めくくっています。


Pearl Jam – Alive (From the BBC)

録音では2人ともBig Muffファズを駆使し、ギター全体をエモーショナルに轟かせていました。アルバム屈指のファンクナンバー「Even Flow」では、マクレディのリフにゴッサードがパワーコードを重ね、ライブでは2本のギターがユニゾンでフレーズを弾くなど迫力のアンサンブルが繰り広げられました。

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『Vs.』(1993)

インタビューによれば『Vs.』(1993)収録の「Go」はドラマーが思いついた即興のリフから生まれ、メンバー全員でその場で形にした曲であり、マクレディ自身も「最高にクールなリフだった」と振り返っています。ストーンはこのリフに合わせたシンプルなパワーコードを重ね、マイクがスクリーモードなソロを付け加え、即席のセッションがそのままアルバム収録曲になりました。


Go – Touring Band 2000 – Pearl Jam
2本のギターのアンサンブルの妙が光る

また、同作の「Daughter」ではゴッサードのオープンDチューニングによる繊細なアルペジオに、マクレディの感情的なスライドソロがアクセントとなり、柔らかなアンサンブルが生まれています。

『Vitalogy』(1994)

『Vitalogy』(1994)ではさらに幅広い表現が見られました。「Not for You」ではストーンの重厚なカッティングに対しマイクはミュートしたリードを重ね、不安定で緊迫感のあるサウンドを作り上げています。一方でアコースティック曲「Better Man」などではゴッサードが軽やかにコードを刻み、マクレディが控えめなアルペジオで曲を彩り、バンドの揺るぎない緊密さを演出しました。この時期、2人のギターは重厚なグランジロックと繊細な旋律を行き来しながら、パール・ジャムサウンドの黄金時代を支えたのです。


Pearl Jam – Better Man (Live from Madison Square Garden)
ボーカルのエディ・ヴェーダーもバリバリギターを弾く。実質パール・ジャムにはギタリストが3人いるとも言える。

1990年代後期

『No Code』(1996)

96年の『No Code』では実験的な要素が増えました。例えば「Who You Are」ではゴッサードのシンプルなコードワークにマクレディがエフェクトを効かせたリードを重ね、静謐な世界観を作り上げています。アンセム「Hail, Hail」では2人が軽快にリフを刻み、フックでは掛け合いを繰り広げました。

『Yield』(1998)

98年『Yield』からは再びダイナミックなギターワークが復活します。「Given to Fly」ではゴッサードがオープンコードによる雄大なリフを奏で、マクレディがそれに高音域のリフで応え、曲全体に天高く羽ばたくような広がりを与えています。また「Wishlist」などのバラードではストーンが優しくアルペジオを重ねる中、マイクがワンフレーズごとに感情的なブレス(息づかいのような音)を入れるなど、繊細な対比が印象的です。


Wishlist (Live) – Touring Band 2000 – Pearl Jam

『Binaural』(2000)

2000年『Binaural』期には音響的な実験も増え、「Nothing as It Seems」では重いベースに合わせてゴッサードがミュート気味のリフを刻み、マクレディが幽玄なスライドソロを乗せることで独特の陰翳を醸し出しています。シングル「Light Years」では2人で緊張感あるミッドテンポのリフを奏でつつ、歌メロではマクレディのトレモロフレーズが効果的に映えました。こうした時期、ゴッサードの堅実さとマクレディの飛翔感が共存し、新しいサウンドを模索しているのが伺えます。

2000年代以降

『Riot Act』(2002)

2000年代に入っても両者のギターワークは進化し続けました。『Riot Act』(2002)では「I Am Mine」のようなアンセムで、ストーンの刻むパワーコードとマイクの泣きのフレーズが合わさり、バンドに深い余韻をもたらします。さらに激しい「Love Boat Captain」ではゴッサードが細かくコードを打ち鳴らし、マクレディがその上で歪んだリードを投げることでダイナミックな対比を生んでいます。

『Backspacer』(2009)

2009年『Backspacer』収録の「Got Some」ではゴッサードとマクレディがキャッチーなリフを掛け合い、グルーヴィーなリズムを強調しました。また同作のバラード「Just Breathe」ではストーンが抑えたアルペジオを奏でる中、マイクが優しく旋律を弾いて温かい質感を演出しています。


Got Some – Live in Rio De Janeiro, Brazil (11/06/2011) – Pearl Jam Bootleg

『Lightning Bolt』(2013)

近年の作品でも、2人のギターワークは健在です。2013年『Lightning Bolt』のリードトラック「Mind Your Manners」では歪んだリフを互いに掛け合い、ストーンの刻む強烈なリズムの上でマイクがガレージ風のノイズを響かせます。2020年『Gigaton』でも「Superblood Wolfmoon」ではマクレディのシグネイチャー・ストラトサウンドが炸裂し、ストーンも必要に応じてアコースティックギターやテレキャスターで味付けするなど、新旧が融合した演奏を披露しました。

『Dark Matter』(2024)

最新作『Dark Matter』(2024)でもその傾向は続きます。公開された「Upper Hand」ではジェフ・アメンが「ストーンのリフにマイクのシュレッドギターが乗っている」と語るほど両者が融合した演奏が展開され、ライブでも大きな盛り上がりを見せています。いずれの時代においても、StoneとMikeのギターは常に緊密な呼吸で絡み合い、Pearl Jamらしい力強い音像を作り上げてきたのです。

使用機材とサウンドメイク

エフェクト・ペダル

両者ともBig Muffファズなどのペダルで荒々しさを加えています。ストーンはKlon CentaurやIbanez TS9、Fulltone Full-Drive 2などのオーバードライブペダルを多用し、好みのゲインサウンドを追求しています。さらにBoss TR-2トレモロ、MXRフランジャー、Electro-Harmonix Memory Manディレイなどを駆使し、曲に彩りを添えます。

マクレディもブースターやワウペダル、コーラスなど豊富なエフェクトを組み合わせ、リードトーンを緻密にチューニングしています。

アンプ

アンプはどちらもマーシャル系を好む傾向があり、マクレディは伝統的な60年代マーシャル(JMP50)を用いて暖かみのあるリードを作り出し、ストーンはオクターブレンジの広いサウンド作りに定評のあるアンプを使ってきました。

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パール・ジャムのギターサウンドは、バンドの歩みとともに成長し続けています。ストーン・ゴッサードとマイク・マクレディの奏でる音は、互いに補完し合い、いつでも胸を打つダイナミックなエネルギーを持っています。マクレディのソウルフルなプレイがバンドに生々しくパワフルなエネルギーを吹き込むように、彼らの情熱あふれる演奏からは新たなインスピレーションが湧き上がってきます。

ステージ上で見せる2人の掛け合いは、言葉を超えたアンサンブルとして観客を圧倒します。今後もその情熱を維持し続ける二人の演奏から目が離せません。

参考資料:
Rolling Stone Japan『パール・ジャム『Vs.』あなたが知らない10の事実』、ソニーミュージックパール・ジャムインタビュー、PR TIMES(Fender Japanプレスリリース)、Wikipedia(ストーン・ゴッサード、マイク・マクレディ)、他。

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