Asian Dub Foundation ギタリスト「チャンドラソニック」:Punk/Dub/民族音楽などを融合した音楽スタイル[記事公開日]2024年8月23日
[最終更新日]2025年05月6日

Asian Dub Foundation
Asian Dub Foundation / Rafi’s Revenge (1998年)

Asian Dub Foundation チャンドラソニック(Steve Chandra Savale)は、パンクやダブ、民族音楽などを大胆に融合した独自のギタースタイルで知られるギタリストです。バンドのギタリスト兼リーダーとして中心的役割を果たしています。本記事ではAsian Dub Foundation チャンドラソニックの音楽的ルーツや演奏スタイル、使用機材、ステージでの役割などを挙げて解説します。

関連記事:エレキギター博士
世界のギタリストランキング

Asian Dub Foundation

チャンドラソニックは1994年にAsian Dub Foundationに加入し、以降バンド最長のメンバーとして現在まで活躍しています。公式スタジオ・アルバム9作すべてに共同作曲・共同プロデュースで関わり、バンドのサウンドを牽引してきました。バンド結成当初は東ロンドンの音楽ワークショップ「コミュニティ・ミュージック」でドクター・ダスとともに若者に音楽を教え、社会的メッセージを音楽で表現する姿勢を築いています。

たとえば、1998年の2ndアルバム『Rafi’s Revenge』では農民蜂起を題材にした「Naxalite」や、冤罪事件を訴える「Free Satpal Ram」など、社会問題を歌った曲が含まれ、世界的な反響を呼びました。その後も2003年『Enemy of the Enemy』や2005年『TANK』は米国への批判など政治的主題を深化させ、バンドは強力なメッセージ性を持つ楽曲で注目を集めました。


Asian Dub Foundation – Free Satpal Ram (Official Audio)

チャンドラソニックの音楽的背景と演奏スタイル

チャンドラソニックはもともとパンク・ロックやポストパンクから影響を受け、ザ・フーやジョイ・ディヴィジョン、パブリック・イメージ・リミテッドなどに傾倒していました。特にジョイ・ディヴィジョンやPILのように「ベースとドラムを主役、ギターは彩り」という発想に感銘を受け、自らもベース・ドラムを支える形でギターを奏でるようになりました。

また、アシッド・ハウスやダンス・ミュージックの時代にも触れており、ギターをエフェクト機材やサンプラーの一部と捉える革新的なアイデアを得ています。彼の言葉を借りれば「ギターはエフェクターへの付属物であり、エフェクトはひとつの楽器だ」と語るほどで、常に新しい音響を追求する姿勢がうかがえます。

加えて、チャンドラソニックはアフリカ系のギターバンドにも興味を示しており、「伝統的なロックはあまり好きではないが、マリのTinariwenやニジェールのMdou Moctarのようなバンドは例外」と公言しています。これらの多彩な影響ゆえか、彼のプレイはエスニックな質感をまぶしたパンク/ダブ・ミクスチャーの様相を呈しています。


Asian Dub Foundation – Rise To The Challenge (Official Audio)

使用機材と音作り

チャンドラソニックは実験的な機材セッティングで知られ、ディレイやフェイザー、フランジャーといった空間系エフェクトを駆使して音響空間を作り出します。ギター本体については、あえて高級品を使わず廉価モデルや改造ギターを使用しています。彼は「高価なギターの代わりに安物を10台買い、チューニングを崩してナイフで弾け」と提言するほどで、実際に弦を1本だけ張って演奏することもあります。こうした手法によって得られる不安定なチューニングやノイズ感が、Asian Dub Foundation独特の荒々しいギター・サウンドを生んでいます。

関連記事:エレキギター博士
ディレイエフェクターとは?初心者のための使い方、設定方法、おすすめの一台

ステージングとバンド内の役割

Asian Dub FoundationはMCやターンテーブル、フルート奏者など多彩なメンバーを含む編成ですが、チャンドラソニックはギターによる鋭いリフやフィードバックでビートを支えます。バンド内では楽曲制作でも常に発言権を持ち、自身も多くのリフやサウンドアイデアを持ち込んで作品を形作ってきました。

Asian Dub Foundationの楽曲は“パンク+バングラ”をテーマにする『パンカラ』(2008年)など、チャンドラソニックが生み出すアグレッシブなギターワークが印象的なものが多く、中級ギタリストにとって耳寄りの教訓が詰まっています。


Asian Dub Foundation – A History Of Now (Official Video)


Asian Dub Foundation チャンドラソニックは、90年代後半~00年代前半にかけてシーンに新風を巻き起こしたギタリストです。その自由な発想でチューニングを変え、多彩なエフェクトで音響を描き出すスタイルは、今もなお参考になる要素に富んでいます。来日公演や30周年記念リリースも予定される中で、過去の名演奏や楽曲を改めて聴き返せば、中級ギタリストにも新たな発見があるでしょう。Asian Dub Foundationの音楽を支え続けるチャンドラソニックの功績とサウンドは、ギターを学ぶ上で刺激的な学びを与えてくれます。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。