90年代にヒット曲を連発し、もはや日本で知らない人は殆どいないであろう国民的バンド、Mr.Childrenとスピッツ。
デビューも同時期でお互いに意識し合う存在だといいます。
今回は日本を代表するこの2組のバンドを徹底比較していきたいと思います。
言わずと知れた日本を代表するモンスターバンド。
メンバーは桜井和寿(Vo.Gt)、田原健一(Gt.)、中川敬輔(Ba.)、鈴木英哉(Dr.)
1992年、ミニアルバム「EVERYTHING」でメジャーデビュー。
以降、「CROSS ROAD」「innocent world」「Tomorrow never knows」「名もなき詩」などミリオンセラーを連発。
ボーカル、桜井和寿の生み出す楽曲の数々は老若男女から愛されています。
こちらも日本を代表するロックバンド、スピッツ。
メンバーは、草野マサムネ(Vo.Gt)、三輪テツヤ(Gt.)、田村明浩(Ba)、崎山龍男(Dr.)
1991年、「ヒバリのこころ」でメジャーデビュー。
「空も飛べるはず」「ロビンソン」「チェリー」などヒット曲多数。
誰もが一度はどこかで耳にしたことのある曲ばかりです。
ボーカル、草野マサムネの文学的な歌詞と透明感のある歌声は今もなお数多くの人々を魅了し続けています。
まずはデビューがほぼ同時期であるということ。バンドの編成も全く同じです。
インディーズの頃は渋谷のLa.mamaにそれぞれ出演していて、バンドブームだった当時ミスチルやスピッツの様にボーカルがアコースティックギターを持って歌うスタイルは珍しく、互いに意識し合っていたようです。
桜井和寿、草野マサムネという天才的なソングライターがボーカルを務め、その天才をメンバーが支えるという形でバンドが成り立っているという点も共通しています。
またどちらのバンドも、一度もメンバーの脱退やメンバーチェンジもなく、デビュー当時のオリジナルメンバーで第一線を30年走り続けています。
まず楽曲やそれぞれのソングライティングについて見ていきたいと思います。
ミスチルの桜井さんの歌詞はJ-Popのお手本の様な歌詞で、わかりやすく、共感性がとても高いです。わかりやすいのに非常に奥深く、秀逸です。
痒い所に手が届く感覚とでも言いましょうか。
「よくぞこの気持ちを上手いこと例えて歌ってくれた!」という気持ちにさせられます。
ミスチルの歌詞が幅広い層に支持されるのも頷けます。
「恋なんていわばエゴとエゴのシーソーゲーム」
ヒット曲「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」の歌詞ですが、恋愛のやりとりをシーソーに例えている時点で、もう「勝ち」と言っていいほど秀逸ですが、「シーソーゲーム」に「She so cute」をかけてくるあたり、本当に天才的なソングライティングだと思います。
「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」
ミスチルの歌詞はとにかく、「上手いなあ」と思わされるものばかりです。
それに対し、スピッツの草野さんの書く歌詞は日本でもトップレベルの独創性です。
ヒット曲のサビのフレーズなど、シンプルでわかりやすいものもありますが、曲の全体を通して見ると非常に難解な表現が多いです。
例えば、有名曲「チェリー」の冒頭に出てくる歌詞の
「生まれたての太陽」
「夢を渡る黄色い砂」
これが何を表現しているのかを100%説明できる人間は、草野さん本人以外にいないでしょう。
「チェリー」に限らずスピッツの楽曲は一聴すると爽やかな歌に聴こえますが、こういった歌詞の細部が非常に文学的でドロドロしたものも多いです。
「チェリー」
難しい単語は使っていないのに、その単語の組み合わせだけでとんでもない奥行きを生み出しています。
草野さんの歌詞の永遠のテーマは「セックス」と「デス(死)」だと語っています。
表面上はすごく爽やかなのに、中身は物凄い狂気に満ちています。
しかし、その狂気や変態性のある歌詞こそが、ファンを沼に引き摺り込んで出られなくしている中毒性の正体なのだと思います。
ヒット曲の多さでいくと、完全にミスチルに軍配が上がると思います。
「名もなき詩」「Tomorrow never knows」がダブルミリオンを達成しているのに対し、スピッツの最高セールスは「ロビンソン」の162万枚です。
商業的に見てミスチルの方が上になった要因はやはり、この歌詞の違いにあるのではと思います。
スピッツの歌詞は大衆音楽としては文学的過ぎたのかもしれません。
曲がヒットするということは、当然、沢山の人に聴かれるということです。
音楽に特に興味もない、まして本や文学に全く興味のない人の心を掴む歌詞でなければなりません。
そうなると、わかりやすくシンプルな歌詞の方がヒットしやすくなるというのが必然です。
しかしながら、音楽をやっている人間からの支持に関してはスピッツはかなり根強いです。
あいみょん、米津玄師、川谷絵音などスピッツに影響を受けたと語るミュージシャンは多いです。
ミスチルはデビューからの30年間、どんどん新しい試みをして変化していったバンドです。
それに対しスピッツは変わらないことでその地位を不動にしいったイメージです。
勿論スピッツも変化はしているのですが、新譜を聴く度に「ああ、スピッツだ。」と安心する気持ちになります。
ミスチルはデビュー後プロデューサーに小林武史を迎え入れました。
ミスチルと小林武史は最強タッグとして、共に黄金時代を築きました。
小林武史の影響もあり、ミスチルのサウンドはスピッツに比べるとかなり音数が多いです。
ミスチルは鍵盤やストリングスも多用しており、ミスチルのヒットは小林武史の功績も大きいでしょう。
「Tomorrow never knows」
J-pop史に残る名イントロですね。
鍵盤、シンセ、ブラスなど沢山の音が入っています。
それに対し、スピッツのヒット曲「空も飛べるはず」などはとてもシンプルなサウンドで、アコギ、エレキ、ベース、ドラム、ボーカルのみで構成されています。
「空も飛べるはず」
スピッツにも専属のサポートキーボーディストは存在するのですが、一貫してバンドサウンドに拘り続けています。
そういった意味ではミスチルとスピッツは真逆のやり方で第一線を走り続けていると言えます。
ミスチルは時代に合わせて柔軟に変化し続け、スピッツは職人の様にバンドの音を追求し続けています。
ミスチルとスピッツはボーカルの声質もまた全く正反対の声質です。
スピッツの草野さんは透明感ある線の細い歌声。
高音を楽々と歌いこなし、その歌声は地声と裏声の区別が殆どつきません。
苦しそうな顔一つせずにあそこまで高音を出せる男性ボーカルはなかなかいません。
それに対して、ミスチルの桜井さんはハスキーで力強い地声を武器にしています。
声帯の閉鎖が強めで倍音成分がしっかり出ているイメージです。
それでいて高音もかなり高いところまで出しています。
歌声に関してはどちらも凄く個性的です。
どちらもはっきりと好みが分かれる声質なのではと思います。
ミスチル派かスピッツ派かを決めるとしたら、この「声」で決める人も少なくないでしょう。
インディーズの頃から、ミスチルの桜井さんはスピッツを意識していて、ライブハウスでスピッツのカセットテープを買ったりしていたといいます。
メジャーデビューはスピッツの方が1年程早く、ミスチルの桜井さんは取り残された様な気持ちだったと語っています。
スピッツの草野さんも「ライバルはミスチル」と語っていて、デビュー以降も互いに意識し合う関係性の様です。
桜井さんが曲作りをしていて、「非常に良い曲が出来た」と思いメンバーに聞かせたところ、スピッツの「君が思い出になる前に」にサビがそっくりだったという逸話もあります。
「君が思い出になる前に」
桜井さんが作った曲、どんなものだったのか気になりますね。
また草野さんはミスチルのドラムについて「桜井君の歌に寄り添う繊細なドラム。ミスチルのヒットの要因として大きいピース。」とラジオで語っていたのも興味深いです。
⑧ボーカルのライブパフォーマンス
ライブパフォーマンスもまた真逆でどっしりと構えて淡々と演奏するスピッツの草野さんに対して、ミスチルの桜井さんはステージ上を激しく走り回り、身振り手振りも大きく、全身で歌を表現しているようです。
「Dance Dance Dance」
激しく走り回り、全身で踊りながらパフォーマンスする桜井さん。
草野さんはハンドマイクで歌うことはあっても会場を走り回っている姿は見たことありません。
スピッツの場合はベースの田村さんがベースを弾きながら走り回るのが定番になっています。
いかがでしたでしょうか。
ミスチルもスピッツも本当に魅力的なバンドです。
それぞれ持ち味は全く違うものの、どちらも一世を風靡したバンドなだけあり楽曲も演奏のクオリティもとても高いです。
筆者が中学、高校生の頃はカラオケに行けば必ず誰かがミスチルかスピッツを歌っていました。(どちらも素人が歌うにはキーが高すぎて難しいのですが。)
現在、30〜40代の方でミスチルもスピッツも聴いてこなかったという方は少ないのではないでしょうか。
日本の音楽は海外に比べて劣っていると言われてしまいがちですが、ミスチルとスピッツは世界に誇れる日本のバンドだと思っています。
今回はボーカルでもあり、ソングライターでもある桜井さんと草野さんの比較がメインになってしまったので、楽器隊のメンバーにももっとスポットを当てた比較も今後してみたいと思います。
ミスチルファン、スピッツファンそれぞれに楽しんで貰えたら嬉しいです。
ライター:kato
2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka
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