今回の記事はボーカリストの方に是非読んで頂きたい内容です。
歌を歌っている殆どの方が「もっと歌が上手くなりたい」そう思っていると思います。
歌が上手くなるために真っ先に思い付くのは「ボイストレーニング(以下ボイトレ)を受ける」ということだと思います。
しかし、実際に周りで歌が上手い人に話を聞くと、ボイトレに一度も行ったことがない人であったり、「ボイトレに行くと個性が無くなる」なんて話を耳にしたり、ボイトレに行くべきなのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回はボイトレの「メリット」と「デメリット」「行った方が良い人」と「行かなくても良い人」について詳しく解説していきたいと思います。
ボイトレとはそもそも何を教えてもらうのかと言いますと、「発声に関する筋肉を自由に扱うためのトレーニング」です。
主に「呼吸器官の使い方」「声帯の使い方」「共鳴器官の使い方」などを教わるものが多いと思います。
歌を歌う時は「腹式呼吸」を使うなんてことをよく耳にすると思いますが、これもボイトレの代表的なもので、これは「呼吸器官の使い方」に含まれます。
歌唱におけるテクニック、例えばビブラートのかけ方であったり、しゃくりを使うといったものは「ボーカルトレーニング」と呼ばれ、ボイトレとは実は別物なのです。
しかし、実際のボイトレの現場では歌唱テクニック的な部分もある程度指導してくれるところが多いです。
これは本当によく耳にします。ボイトレに関する一番の不安要素だと思います。
筆者の知り合いにメジャーのバンドでボーカルをしている友人がいるのですが、その友人は事務所と契約をした際に、社長に「ボイトレには行くな」と言われたそうです。
これはやはりボーカリストの個性が失われることを危惧しての発言だと思われます。
ではやはり、ボイトレには行かない方が良いのでしょうか。
筆者の尊敬するボイストレーナーの先生は、「ボイトレは散らかった机を整える作業だ」と仰っていました。
散らかった机を整頓して何もない真っさらの状態にしていく作業。
それはつまり歌における悪い癖などを取り除き、フラットな状態を作っていく作業でもあります。
確かにボイトレを忠実にこなしただけの歌では、それは個性がない歌とも言えるかもしれません。
しかし、実際は机の上を綺麗にした後に、どんな家具をどのように配置していくかを各々が決めていくという作業をします。
ボイトレも基礎を悪い癖を取り除きフラットな状態を作った後に、自分が好きな歌い方をデザインしていって良いのです。
また、「ビブラート」「しゃくり」「ミックスボイス」といった歌唱テクニックを使用しようと思った時に、机の上が散らかった状態の歌ではそれらを正しく使いこなすことが出来ません。
正しく使いこなせないだけならまだ良いですが、間違った発声のまま練習を行うと声帯を痛めたり、最悪の場合ポリープを作ってしまうというリスクもあります。
先程紹介した友人は因みに、事務所に所属した段階で殆ど歌が完成されていました。
発声に関しても誰に習ったわけでもありませんが、既に十分に整っていたと思います。
事務所の社長が「ボイトレに行くな」と言ったのは、その友人の歌のレベルが非常に高く、既に完成されているものであったことを考慮した上で言ったのだと思います。
他にもメジャーと契約した知り合いの歌い手さんが何人かいますが、「事務所からボイトレを受けさせられた」という人の方が多いです。
大前提として、「自分の歌に100%満足している」という人はボイトレに通う必要はありません。
自分の歌い方の癖も含めて気に入っていて、歌うことに支障がないのであれば、それをわざわざ矯正するは必要ないでしょう。
しかし、少しでも歌い辛さや、納得のいかない部分があるのであればボイトレを受けてみることをオススメします。
「高い声が出せない」「低い声が苦手」「声量がない」「ビブラートが上手く出来ない」「声が枯れやすい」「ピッチを正確にしたい」など歌に関する悩みは尽きないと思います。
これらのどの悩みもボイトレで発声を整えることで解決が期待できます。
「歌」というものは楽器とは違い、誰かに教わらなくてもすぐに歌えてしまいます。
その分、正しい歌の歌い方を知らないまま練習し続けている人が殆どです。
先程、紹介した友人のケースのように「歌」というものは天性で上手く歌えてしまう人が一定数います。
これは遺伝的なものだったり、幼少期の育った環境などが大きいと思います。
ここからは完全に筆者の持論ですが、幼少期に歌を聞かせてくれる大人、例えば、幼稚園の先生や、小学校の先生などが音痴であると、その歌を聞かされて育った子供は音痴になるのではないかと思っています。
しかしながら、歌を上達させるのに遅すぎるということはありません。
自分の歌声に少しでも満足出来ないようであれば、何歳からでもボイトレを受ける意味はあると思います。
ボイトレを受ける最大のメリットはズバリ、「間違った練習をしてしまうことを防げる」という点です。
これは歌に限らず楽器、スポーツ、その他のあらゆる事に当てはまります。
真面目な人ほど自己流でどんどん練習してしまいます。
しかし、ここで恐ろしいのは間違ったやり方で、間違った方向に練習し続けてしまうことです。
「努力しても上手くならない」と言っている人の殆どは、間違った努力をしてしまっています。
間違った努力をどんなに続けても上達することはありません。
厳しい言い方をすれば、時間と労力の無駄ですし、変な癖がついたり体を壊したりといったデメリットさえあります。
今はとても便利な時代で、ネットを使えばボイトレも楽器の弾き方も優れた教材を無料で見ることが出来ます。
しかし、これが逆にとても危険なのです。
ネットには色んな情報が飽和していて、自身の状況に相応しくない練習方をチョイスしてしまうということが起こり得ます。
例えば、高い声を出したいと思いネットで調べたところ「腹式呼吸をマスターすれば高音が出しやすくなる」という記事を見つけて、ひたすら腹式呼吸を練習したとします。
しかし、腹式呼吸をマスターしただけでは高音を出せるようにはなりません。
高音を出すためには高音を出すための「声帯の正しい使い方」をマスターしなければならないからです。
「高音を出すコツは頭に抜けていくイメージで声を出す」なんていうのもよく見かけます。
しかし、頭の上に向かって地声を無理矢理引っ張り上げても高音は出せませんし、下手をすると声帯を痛めることになりかねません。
こうした「誤った練習を続けてしまう」という最悪の事態を防げるという点で、ボイトレに通うというのはとても意味のあることだと思います。
これはボイトレに限らず、楽器もスポーツも勉強も、独学でやるよりもその道のプロに教わった方が確実に、より早く成長出来るのは明白です。
しかし、逆にボイトレに通うだけで満足してしまっても、大きな成長は望めません。
しっかりと家でも自分で練習し、その確認の場所としてボイトレを使うというのが最も効果的な練習です。
歌が上手くなりやい人であるならば、基本的にボイトレに通うデメリットはないと思います。
ボイトレは確かに、ある程度歌い方を均一化するような側面はありますが、それによって完全に個性が無くなるという心配はいりません。
人はそれぞれ、好きな歌手、聴いてきた音楽が違います。
更に体の大きさ、声帯の形や大きさも一つとして同じものはありません。
そして、個性というものはそもそも「無くす」とか「意図的に付ける」ようなものではなく自然と滲み出てくるものです。
①「あの人はめちゃくちゃ発声が綺麗で歌が上手いのに、何だか全然心に響かない」
②「あの人はあまり歌が上手いとは思はないけど、何だか凄く感動する」
「ボイトレに通って個性が無くなる」と考えている人は①のような歌い手さんをイメージしていると思います。
「歌が上手い=人を感動させる」とは限らないというのが難しいところです。
しかし、誤解して欲しくないのはこの場合、①の人は個性がないために人を感動させることが出来ないわけではないのです。
色んな理由が考えられると思います。
単純に選曲が合っていないのかもしれませんし、聴き手の好みによるところも大きいでしょう。
オリジナルの曲ならば、曲が良くない可能性もあります。
ピッチが合っていて発声も綺麗だったとしても、抑揚がなく表現力に乏しい歌なのかもしれません。
逆に②の「あまり歌が上手くないのに感動的な歌が歌える人」は、もっと練習して歌唱力を鍛えれば、もっともっと沢山の人を感動させることが出来るかもしれません。
いずれにせよ、ボイトレに通ったせいで感動させる歌が歌えなくなるということはあり得ません。
いかがでしたでしょうか。
まとめると、ボイトレに行く必要がない人は「自分の歌に100%満足出来ている人」
それ以外の、少しでも自分の歌に悩みを抱えている人は是非一度ボイトレに行ってみることをオススメします。
「ボイトレに行くと個性が無くなる」そう考えていた方は非常に勿体ないです。
楽器も歌も人を感動させるレベルまで達するには、血の滲むような努力が必要です。
当然、基礎を疎かにしていてはそのレベルに達するのは夢のまた夢でしょう。
実際、テレビに出ているようなプロの歌手でも専属のボイストレーナーが付いていたり、きちんと基礎を身につけている人が殆どです。
少しでも歌が上手くなりたいと考えている方は、是非自分にあったボイトレの先生を探してみて下さい。
一度、無料体験などをやっているところに申し込んでみるのも良いと思いますよ。
EYS音楽スクール ボーカル教室
シアーミュージック ボイトレボーカルコース
ライター:kato
2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka
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