back numberアルバム「MAGIC」全曲レビュー[記事公開日]2020年12月22日
[最終更新日]2020年12月22日
[ライター]kato

back number「MAGIC」

back number 6枚目にしてメジャー5枚目のアルバム「MAGIC」

5thアルバム「シャンデリア」から約3年3ヶ月ぶりのリリースとなった今作の全曲レビューを書いてみた。

1.最深部

アルバムの一曲目を飾るギターロックなナンバー。本音で生きていない自分自身と、それに対して心が問いかけてくるという内容の詩の世界は非常に引き込まれるものがある。

自分自身への葛藤を描いているという点では「青い春」に通じるものを感じた。

ヒット曲を連発し、日本が誇るポップスバンドとしての印象が世間に浸透し始めていたが、「back numberはロックバンドなんだ」と再認識させられる一曲目だと思う。

余計な音は一切使わず、エレキギター、ドラム、ベースで構成されたこの楽曲は強力なメッセージを放つロックであると共に、ボーカル清水のずば抜けたポップセンスが絶妙にミックスされている。

2.サマーワンダーランド

イントロのギターリフが印象的な楽曲。

たたみ掛けるように言葉数の多い歌詞だが、ボーカル清水の良い意味で癖のない歌い方で一言一言がスーッと入ってくる。

とても心地よくキャッチーなメロディラインはつい口ずさみたくなるが、

実際に口ずさんでみるとback numberの歌は本当に難しい。

飄々と歌っているがボーカル清水は実は相当な歌唱力の持ち主だ。

友達以上恋人未満の距離感を独自の視点で描いたこの楽曲はback numberの真骨頂と言えるだろう。

3.瞬き

back number 17枚目のシングル。

映画「8年越しの花嫁奇跡の実話」の主題歌。

 

幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が

繰り返すようなものじゃなく 

大切な人に降りかかった

雨に傘をさせる事だ

 

歌い出しサビのこの歌詞から胸の奥を掴まれたリスナーも少なくないだろう。

Mr.Childrenやレミオロメンのアレンジを手掛けたことでも有名な小林武史さんをアレンジャーに向けた今作は鍵盤やストリングをがっつり盛り込んでいる。

1サビ前のブレイクでボーカルとギターだけになった瞬間には背筋がゾクッとした。

Jwaveのインタビューでボーカルの清水は、

これまでは、好きだとかそういうことを言う時に、『~かもしれない』とか、『~だと思う』とか使ってきたんですけど、生き様を語る上で、表現を濁しちゃいけないと思って、なるべくそういう言葉は使わないというのは意識したと思います。」

引用: back number清水依与吏さんが語る新曲『瞬き』&ラブソング制作秘話。 – J-WAVE 81.3 FM JK RADIO TOKYO UNITED

と述べている。

今までのback numberの恋愛の曲にはなかった、強い意志のこもったラブソング に仕上がっていると思う。

4.あかるいよるに

キリンビール「淡麗グリーンラベル」のCMソング。

 

生まれた時からずっと一緒にいるわりに
ずいぶん息の合わない私と心

 

と歌っているように、恋愛の歌のように見せかけて1曲目の「最深部」同様、自分自身との対話がテーマの楽曲だ。

この楽曲で一つのキーワードとなっている「魔法」という言葉はアルバムタイトルの「MAGIC」そのもの。

一曲目の「最深部」は「心」の視点から主人公に話しかけていて、この「あかるいよる

に」は「私」の視点から「心」に語りかけているので、ちょつど対になる曲も言えるのではないだろうか。

そしてこのアルバム「MAGIC」のテーマが詰まった根幹となる楽曲なのだと感じる。

5.ARTIST

体を思わず揺らしたくなる4つ打ちのドラムと唸るようなベースラインが耳に残るアッパーな楽曲。

タイトルの通り「ARTIST(アーティスト)」について歌われていて、自分たちのいる音楽業界を皮肉った歌詞になっている。

シングル「瞬き」のカップリングでもあるこの曲は、カップリングにも関わらずPVが公開されている。

6.オールドファッション

ドラマ「大恋愛〜僕を忘れる君と〜」

とても歌詞の表現が繊細で秀逸でその完成度が非常に高い。

 

花は風を待って

月が夜を照らすのと同じように

僕に君なんだ

 

自分にとって「君」がどれだけ普遍的で大切で、なくてはならない存在かをここまで美しい表現で描ける清水のソングライティングセンスには脱帽だ。

 

君という素敵な生き物の素敵さが

いま2回出た素敵は わざとだからね

どうでもいいか

 

こういったユーモアも交えることで楽曲のシリアスさを中和して非常にラブソングとして高いクオリティに仕上げているように思う。

ボーカルの清水はインタビューで、

 

オールドファッションという言葉の元々の意味は時期を表すもので。

“今とは違う昔の”とか”古き良き”という言葉で表される人生の中ですごく光ってる時期の記憶や思い出を象徴するのにふさわしいと思ったので使いました。

そういう時間って、誰でも持っていると思うし、僕にもありますし、人生を生きるにあたってとても重要なんじゃないかなって。

そういう幸せな思い出って、消しても消えないというか忘れても消えない。

 

と語っている。

引用: back number – new single「オールドファッション」special site

「オールドファッション 」というタイトル、歌詞の内容はドラマの内容ともリンクしているところがあり、それを踏まえて聴くとまたより一層胸にくるものがある。

7.ロンリネス

この曲もカップリング曲だが、歌詞の設定がずば抜けて面白いと感じた。

人間を作っている神様に対してインタビューをしていくという設定は斬新で、皮肉たっぷりで強いメッセージ性を感じる。

ここまでクオリティーの高い楽曲をカップリングに持ってくるあたり、back numberの底知れぬポテンシャルを感じずにはいられない。

8.雨と僕の話

とてもback numberらしい王道のバラード。

亀田誠治さんが編曲に加わっていることで亀田さんの色もしっかりと加わって、非常にクオリティの高いポップスに仕上がっていると思う。

恋の終わりを切々と歌ったこの曲は、多くの人々の心の奥にある失恋の経験を鮮明に呼び起こすだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=yJWmKAuDnZ8

9.エキシビジョンデスマッチ

歪んだエレキギターのサウンドとストリングスの絡み合いが心地よい楽曲。

 

全部が全部 解った調子で

どこで拾った物差しなの

嗚呼 そんなもんで人の未来を測るんだね

 

といった歌詞や

 

誰も理解できない筋道で良い

戦う相手を間違えないでよ

 

といった歌詞から、他人の価値観に左右されずに、自分を持って生きていけよというメッセージと、価値観を押し付けてくる人間に対しての批判が込められているように感じる。

10.monaural fantasy

アルバム10曲目のこの曲は、イントロのシンセの音色から雰囲気が今までと少し変わり、具体的には書かれていませんが、大切な人をなくした失恋の歌のようにも聞こえる。

「monaural fantasy(モノラルファンタジー)」というタイトルは、「モノラル=片方だけの」という意味で、「君がいない世界はまるで片目を瞑ったかのように何かが欠けている」といった意味に感じますが、恋愛には限定せずに、自分の人生において大切なものがなくなってしまった時の喪失感を歌っているのかもしれない。

11.HAPPY BIRTHDAY

TBS系ドラマ「初めて恋をした日に読む話」の主題歌。

初めてこの楽曲を聴いた時、「HAPPY BIRTHDAY」というタイトルから恋人へのラブソングだと勝手に感じて聴いてしまい、

 

ハッピーバースデー片想いの俺

 

というサビを締め括るフレーズで、「そう来たか!やられた、、」と唸ってしまいました。

back numberはどこまでいってもback numberで、芯にあるものは1ミリもブレずにシングル曲でもカップリングでも、しっかりと自分たちの歌を届けている。

12.大不正解

アルバムを締め括るのはback number18枚目のシングル曲「大不正解」

映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』の主題歌として書き下ろされた楽曲で、ボーカルの清水は原作の大ファンだと公言している。

 

銀魂の世界が歌詞の中だったり、メロディ、演奏の中の一部としてきちんと鳴ってるものがいいなと思って。その近くまでもって行けたなという感じはある。

 

とインタビューで語っている。

引用: https://www.hmv.co.jp/news/article/1807031001/

清水節全開のメロディアスなポップスでありながらも、しっかりとロックで、絶妙なバランスで作られた楽曲のように感じる。

総評

シングル曲を多く含んだこのアルバムは、かなりJ-POPに落とし込まれた作品なのかと思って聴いたのですが、しっかりと3ピースロックバンドとしての色も出ているように感じた。

邦楽シーンの最前線でヒット曲を作りながらも、芯にあるものはブレずにロックを鳴らし続けている。

シングル曲だけでなくカップリング曲やアルバム曲のクオリティも恐ろしく高く、「どうしてこの曲がカップリングなんだ」と思わされる曲ばかりだ。

back numberは売れてるバンドだから聴かない」と決めつけている意固地なロックバンドファンがいるとしたら、このアルバムを聴かないとは、なんて損なことをしているのだろう。

ライター:kato

2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka

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