2000年代に入った頃、日本でも爆発的な人気を誇ったアメリカ発のTaylorアコースティックギター。それから20年以上が経過した現在、当時のような強烈な勢いこそ落ち着きましたが、ブランドとしてはすでに定番としてギブソン、マーティンに次ぐほどの確固たる地位を形成しています。そんなTaylorギターについて詳しく掘り下げてみましょう。
テイラー社は1974年、ボブ・テイラー、カート・リスタグによって、カリフォルニア州サンディエゴに設立されました。ボブ・テイラーは学校に在籍中、自分のギターを製作することに熱中し、その結果として卒業後、アメリカン・ドリームという名の店でギターの製造を行うこととなります。同僚のカート・リスタグは知人や家族より工面した金銭でその店を買い取ることとなり、ギター製造販売の店舗として二人の共同経営が始まりました。以来、40年間成長の一途を辿り、2014年には全米でもっともアコースティックギターを売り上げたブランドとなり、数多くのプロミュージシャンからも愛される、定番のメーカーへと上り詰めました。
楽器として非常に選びやすいテイラーのギターですが、これは生産ラインに大胆に導入されたコンピューターにより、個体ごとの品質の差を最小限にとどめており、どのモデルでも安定した音色が得られるためです。アコースティックギターでは類を見ない、ボルトオンとシムを挟んだ構造のネックジョイントでは、ネックのアングルを非常に微細にかつ簡単に調整することを可能とし、2010年代以降は従来のXブレーシングと一線を画するVブレーシング(後述)を採用するモデルが増えています。従来の工法にとらわれない、このような新しい製作の姿勢こそがテイラーのメーカーとしての特徴であり魅力にもなっています。
また、エレアコとしてのラインナップが非常に充実しており、Expression Systemと呼ばれる独自のピックアップを開発し搭載しているところも見逃せないポイント。ピックアップと本体との同時開発は相互の相性の高さに直結し、実際の演奏現場での使いやすさも群を抜いています。ステージで演奏する機会の多いミュージシャンに支持される理由は、このようなところにもあると言えるでしょう。
テイラーのギターはほとんどが3桁の数字に寄って管理されます。ここに当てはまらないAcademy、ADシリーズやGS MiniシリーズやBaby Taylorなど、ラインナップは多岐に渡りますが、まずは数字の意味を見ておきましょう。
サイド、バックにどのような木材が使われているかを表します。もっとも売り上げの多い200番台はコアやローズウッド、300番台はサペリなど。また市場に多く出回っている500番台はマホガニーの使用を表します。高級機種と呼べる700~900番台は全てローズウッドです。数字とともにグレードも上がる傾向にあり、値段は200番台が10万円台中盤、800番台以降になると50万円近くするものも。
トップ材を表します。1では柔らかいソフトウッドのトップ、2では硬めのハードウッドのトップとなります。前者の方が音色も柔らかくなりやすく、後者は硬質に響く傾向があります。またこの数字が5、6になると12弦仕様となります。
形状を表します。数字が大きくなるほどサイズも大きくなります。また略字の”G”はいずれも”グランド”と読みます。
2 | GC(コンサート) | ボディは浅く小さめ。サイズ以上のボリューム感がありフィンガーピッキングに最適。 |
4 | GA(オーデトリアム) | 94年発表の、テイラー初のオリジナルデザイン。あらゆる奏法に適し、今でももっとも人気のあるシェイプの一つです。 |
6 | GS(シンフォニー) | GAをより大きくしたデザイン。V-Classシリーズはカッタウェイ部にもう一つのサウンドホールを付けることで、レンジの広いサウンドを獲得し、ソロギターに向いたサウンドになっています。 |
7 | GP(パシフィック) | 他の形状とは一線を画すトラディショナルなシェイプ。昔ながらの暖かみのあるサウンドです。 |
8 | GO(オーケストラ) | 2013年誕生、テイラー最大となる形状のもの。大きなシェイプながら高域までをしっかりと発音し、サステインも良好。 |
モデル名の最後に付く”e”はエレアコ仕様である証明で、ピックアップとプリアンプが付いた構造。また、”V-Class”は従来のXブレーシングに代わり新しくテイラーが開発したVブレーシングが採用されていることの証明となります。
テイラー社はこのVブレーシングについて、深い共鳴と高い剛性を両立することを可能とし、より長いサステイン、イントネーション、レスポンスの向上が得られると説明しており、マーティンが開発し100年以上に渡って主流となってきたXブレーシングに次ぐ、新たな発明であると宣言しています。
テイラーのマスタービルダー、アンディ・パワーズ氏が、ビギナーのために弾きやすさに拘ってデザインされた、初心者用エントリーモデル。合板でありながら単板を彷彿させるほどの響きの良さを持ち、この価格帯にしては珍しくアームレストが設けてあるところからも、弾きやすさに拘っていることがよく窺えます。他社のエントリーモデルよりは割高ですが、その価格差の恩恵は十分に受けることができるでしょう。
Academy 12を…
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2010年の発売以降、テイラーのギター中でももっとも多い売り上げを誇るシリーズの一つ。グランドシンフォニーのフォルムをサイズダウンした小さな形状のギターながら、フルサイズに準ずる響きの良さがあり、持ちやすさ、弾きやすさ、高すぎない値段なども相まって、特に初心者を中心に非常に高い人気を誇ります。シリーズは、ふくよかでバランスの取れたマホガニー、硬質な響きが持ち味のローズウッド、バランスが取れた太さと煌びやかさを持つコアの3種がラインナップされ、それぞれにピックアップ付きのエレアコバージョンが存在します。初心者の1本目のみならず、上級者のサブギターや持ち運び専用機としてもおすすめです。
GS Miniを…
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3桁目の数字に”4”を持つグランドオーディトリアム形状はテイラーでもっとも人気のあるシェイプ。214はその中でもブランドを代表するギターで、200番台のギターは1 11/16”のナット幅を持ち、やや細く感じるネックが採用されているところがより初心者向きと言えます。単板のシトカスプルースをトップに置くところは共通していますが、サイド、バックにローズウッドを使用した214ce Rosewood、バランスの取れたコア材を使用した214ce Koaなどが別々にラインナップされています。弾きやすい形状、豊かな音の鳴り共に、他社製の中級機を凌駕するクオリティを備えており、バランスの取れたサウンド傾向はジャンルを選びません。初心者の1本目としてはそれなりの値段ですが、選ぶ価値は十分にあるでしょう。
214ceを…
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ラインナップ中でも中級に位置する300番台。シリーズは共通してマホガニーの代替材として多く使われるサペリをボディに配し、煌めきのあるスプルースをトップに配置。木材の違いによるバリエーションこそありませんが、形状の違いにより数種類がラインナップされます。ショートスケールを採用し、弦のテンションを緩和した構造は高いプレイアビリティに直結していながらも、響きの豊かさははいささかも犠牲になっておらず、いずれもふくよかさと煌びやかさを併せ持つテイラーの魅力を引き出した代表的モデルといえる存在です。また、テイラーの中でももっとも売れているモデルの一つで、あらゆるプレイヤーを満足させるポテンシャルを持っています。また300番台以降はV-Classブレーシングという特別なブレーシングが施されているものがあり、”V-Class”のモデル名はその証明となります。
312ce V-Classを…
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ボブ・テイラー、カート・リスタグが始めにギター製作をスタートさせた店の名「American Dream」にちなんだシリーズ。新型コロナウイルスによる世界的な逆境を乗り越えようとする姿勢が開発の動機となっており、その通りの力強い音色が持ち味です。昨今ではエレキギターなどにも使われるオヴァンコールがサイド、バックに使用され、トップはスプルース。トラディショナルなシェイプであるグランド・パシフィックを採用し、前へ鮮やかに飛び出すような明るさ、太さを感じるサウンドです。
AD17eを…
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ボディにマホガニーを使用した500番台の中、中程度のグランド・オーディトリアム形状を持つもの。表板にはシダーを用いており、ふくよかなサウンドが魅力で、ボディの大きさからも、様々な用途に使用できる汎用性を持っています。ソロギターなどのフィンガーピッカーに特に適していますが、ストロークプレイにもしっかり追従する立ち上がりの良さを備えます。
514ceを…
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トップにラッツ・スプルース、サイド、バックにローズウッドを用いた、硬質なサウンドが特徴の700番台。712ceはその中でも代表的な製品で、特に煌びやかなストロークプレイに適したサウンドが得られます。また、繊細さを感じる800番台のものに比べると暖かみやふくよかさが出ており、硬質でありながら豊潤さも併せ持ったバランスが魅力です。アコースティック編成にはもちろん、そのパワー感はバンドの中においてもその存在感を発揮できるでしょう。
712ce V-Classを…
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通常サイズの3/4に抑えられたミニギター。その小型とは思えない鳴りや作りの良さから、大人気を誇るシリーズです。トップにシトカスプルース、サイド、バックにウォルナットのものと、トップにマホガニー、サイド、バックにサペリを採用した2モデルがあり、互いに全く違う音色の傾向を持つ上、それぞれにエレアコ仕様のものもラインナップされています。キッズ用としてはもちろん、身体の小さな女性用、持ち運び用、エレキギタリストのためのライブ用アコギとしても優秀で、用途を選ばない汎用性の高さもおおいに魅力です。
Baby Taylorを…
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どのモデルも優秀なテイラーのアコースティックギター。平均的な値段については日本のブランドに比べるとやや高めになっていますが、個体差が少なく、プレイアビリティと音色を両立したクオリティはその値段分の価値を十二分に感じます。ラインナップが幅広く、自分の好みのものが見つかりやすいのも魅力ですね。
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