マスター、ビールをくれ。人生のように苦いやつだ(お酒は二十歳になってから)。
ギターショップの店員は、お花畑のように大好きなギターに囲まれているだけの職業ではありません。個人的な悩み、業界に潜む矛盾。ロックが鳴り響く店内でも、店員の脳内ブルースマンは泣きのチョーキングビブラートを奏でているかもしれません。今回は、「ショップ店員の悲哀」をピックアップしたお話です。
新品で購入するギターだったら、調整なんてバッチリで当たり前。こう考えている人は多いことでしょう。新品ならば完全。しかし、現実はちょっと違います。
ショップで売っているギターをチェックすると、
安価なものを中心に、このような状態のギターを見かけることがあります。
エレキギターならブリッジの調整でもすれば全く問題なくオクターブ調整はできますが、アコギの場合弦高調整とブリッジを削るまでやらなければなりません。ネックが痩せたら、はみ出たフレットを削るしかありません。
価格を下げるための企業努力の裏には、「許容範囲の見直し」が含まれます。出荷に向けてオクターブ調整をする際、バッチリの状態からどこまでの範囲が許されるか。この幅が妥協できるぎりぎりの範囲で広く取られることで、セットアップにかかる作業時間すなわち人件費が節約できるわけです。店頭に並ぶまでの間に調整が変わったことも充分に考えられますが、出荷時点の調整が甘いのが最大の理由です。
また、パーツや材料の価格をいかに落としていくかにも、「許容範囲の見直し」が効いてきます。たとえば木材はボイラー室で乾燥させますが、どこまで乾燥させたら合格かを見直し、高級ギター用ならもう一息乾燥させなければならないあたりで製材を終わらせます。乾燥の工程が短くなるので、安くできるわけです。少なくとも出荷に問題はないギターがそこで出来上がりますが、ギターになってからも乾燥が進行するため、ネックが痩せてしまいます。気候やエアコンによる極度の乾燥もネック痩せの原因ですが、木の乾燥が不十分だというのが真相です。
調整が甘いのもネックが痩せるのも、そのギターの「仕様」であり、不良品ではありません。メーカーははっきりと「仕様です。」と言うそうです。ですから新品でのこうした不具合は、ショップのリペアマンがサービスで手直ししていることが多いようです。たとえばアコギのオクターブ調整&フレットエッジ削り直しで、工賃が一万円くらいかかる工房もあります。一万円のギターを売って、サービスで一万円のリペアをする。儲かりません。
このように、経費削減で安くなったギターを調整する人件費を、店が負担しているのが現状です。「売る側の責任」という言葉もありますが、少しでも安いギターを売ろうという店の方針、また店をそうさせる業界のあおりをもろに食っていると言えるでしょう。
どんなギターでも、どんな高級機でも、木製楽器である以上は状態の変化は避けられません。定期的な状態チェック、適宜メンテナンスはどんな楽器でも必要ですから、調整が崩れる可能性は安いギターを買ってはならないという根拠になりません。状態変化は適宜調整し、壊れたら直せばいいのです。買う前にショップで直してくれたものなら、むしろ「買い」です。
ギターの値下げ競争は、いまだとどまるところを知らない様相です。精度や安定性まで犠牲にした激安ギターが横行していますが、それでもちゃんとしたものが求められるこの世の中、現場で対応する店員さんが背中で奏でるブルースに、泣けます。きちんとしたギターを売ってくれるショップの店員さんに、栄えあれ。
ライター:小林 健悟
「エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ 松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi
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