日本を代表するギター製作会社のひとつであるフジゲンは、数々の有名ブランドのOEM生産などを手がけて、現在では自社生産の数多くのモデルが店頭に並ぶようになっています。そんなフジゲンのラインナップについて幅広く見ていきましょう。
1960年に富士弦楽器製造として設立され、クラシックギターを主に手掛け始めます。しかし、クラシックギターをメインとしていた時期は短く、60年代後半には当時勢いを見せ始めたエレキギターの製造へと舵を切っていきました。その後、アイバニーズやグレコなど、今でもよく知られるブランドの下請けとして、フェンダー、ギブソンのコピーモデルを製作していました。
その後、1982年にはフェンダー、神田商会、山野楽器との共同で「フェンダージャパン」を設立。1983年には、ギター出荷量世界一を成し遂げます。1985年に本家フェンダーがCBSより売却され、危機に陥った際には、工場の新設を支援し再興の手助けを行うなど、この時期の富士弦楽器製造はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
1989年、会社のグループ化を視野に置き、現在の社名であるフジゲン株式会社に改名。90年代に入ってからは下請け製造を新興国に奪われる形で業績が悪化。2000年代からはエレキギター生産の技術を活かす形で高級乗用車のウッドパネル生産を開始し、これは現在のフジゲンの売り上げの中、欠かすことのできない比重を占めるまでに至っています。本業であるエレキギターについては、下請けでなく自社ブランドにも力を入れるようになり、2001年に自社ブランドの旗艦店として池袋にフジゲンカスタムハウスをオープン。多彩なモデルが送り出される現在の形に繋がっていきます。
あらゆるエレキギターをOEMで作ってきた同社の、技術的なノウハウの蓄積はまさに世界トップレベル。そんな技術に裏打ちされた弾きやすさ、使いやすい音色などが特色に挙げられます。
ナットとフレットが同心円状に配置され、全ての弦をフレットと直行させる構造。フジゲンは2002年にこの構造についての特許を取得しており、全てのギターにこれを採用しています。全ての弦で安定したピッチが得られ、クリアな音色となります。
ハイポジションに行くほど指板のRが緩やかになるコンパウンドラディアス指板を採用。円錐指板とも呼ばれるこの構造は、ローポジションではオープンコードなどを押さえやすくし、ハイポジションではチョーキングの音詰まりなどを回避することができます。また弦高も下げやすくなり、テクニカルなプレイにも向いています。通常は高級モデルに採用される構造ですが、フジゲンの場合、下位グレードのBoundaryシリーズにもこの指板を採用しています。またネックの装着は通常のボルトオン方式ですが、通常のストラトに比べ、約1mmボディ側に下げることで、より高いプレイアビリティを確保しています。
世界各国の材木業者との太いパイプを持ち、貴重でかつ楽器に適した材を厳選してストック。この利点はまさに歴史が長い大きなメーカーならではと言ってよく、長野県にあるフジゲンの工場では常時膨大な数の木材が寝かせられています。特に最高グレードとなるExpertシリーズには、ネックに狂いの少ない安定した柾目材、ボディには比較的軽量な良質材を厳選の上採用されます。
EOS-ASH-M
フジゲンのギターは、それぞれExpert、J-Standard、Boundaryと3つのグレードに分かれています。また、それとは別軸としてホロウボディのMasterfield、往年のトラッドなスタイルのNeo Classicの二種が用意されており、それぞれに個性を持った展開がなされています。
グレードごとにボディの形状によって数種類のシリーズが存在します。
ODYSSEY | モダンストラト的なボディ形状にSSHレイアウトのピックアップを配置。ハムバッカーについてはコイルスプリットも装備し、オールマイティに使えるフジゲンの看板モデル。全てのグレードでラインナップされます。 |
FRAME | Expertのみにラインナップ。フレイムメイプルを配したシングルカッタウェイのアーチトップボディからは高級感を感じます。ハムバッカーを二基搭載し、レスポールやPRSに近い印象の出音で、ハードロックからジャズまで幅広いジャンルに対応可能です。 |
ILIAD | J-Standard、Boundaryにのみラインナップされるシリーズ。一見テレキャスターに近い形状に見えますが、様々なピックアップレイアウトのモデルが存在し、エクストラロングスケールのメタル用もラインナップされるなど、全シリーズの中でも独自性の強いモデルが含まれます。 |
その他 | Neo Classicはストラトやレスポールに近いNLC、NSTなどを中心に構成され、MasterfieldはフルアコのMFA、セミアコのMSAのみラインナップ。その他メタル仕様のMYTHICなどが存在します。 |
《手が届くハイエンド》フジゲンのフラッグシップモデル「EOS」シリーズ – エレキギター博士
EOS-FM-R Vintage Violin
フレイムメイプルをアッシュの上に貼り付けた、EOSの最高スペックモデル。ネックにはメイプル、指板にはローズウッドが採用されており、エレキギターの定番の木材が選ばれています。アッシュの特性でもある、乾いた中高域の中に煌びやかさがあり、SSHのピックアップ配列も相まって、どのようなジャンルでもこなせる優等生です。
EOS FM-Rを…
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EOSの中でもアルダー材で仕上げられ、より通常のストラトキャスターに近いスペックを持つモデル。色合いはシンプルですが、よりトラッドな印象の強いサウンド傾向となり、低音が控えめになった分、中高域にピークを持ち、明るめのシャッキリとした音色が魅力です。フレイムメイプルのものに比べ高級感では劣りますが、ボディはより軽く、演奏性では上回るでしょう。
EOS AL-Rを…
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EFL-FM/EB
EOSと双璧を成すフジゲンの看板モデル。フレイムメイプルとマホガニーの二層構造のボディに、マホガニーネックとローズウッド指板という組み合わせは、まさにレスポールと同様のもの。ピックアップ切替スイッチの他はマスターボリュームとマスタートーンのみが配置され、操作の簡便さを優先して作られている辺りは、PRSのギターに近い印象も受けます。形状から感じる印象そのままにバリッとした太い音が魅力です。
EFL FMを…
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中級機J-StandardにおけるODYSSEY。フレイムメイプルをトップに配したその佇まいは上位機種さながら。ボディバックにはバスウッド、指板には昨今貴重になりつつあるローズウッドを避け、グレナディロを採用することで、コストパフォーマンスを確保しています。10万円に満たない価格で手に入るモダンストラトでは、最高の一本と言っても過言ではないでしょう。
JOS2を…
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タイトでキレ味のある低音を期待できるアッシュボディ、そして664mmのロングネックを装備し、モダンヘヴィなスタイルに対応したモデル。ドロップCチューニングをデフォルトとして作られており、7弦ギターに迫る低音を確保しています。低音の輪郭はくっきりとしていながら、高音部分は切り裂くようなエッジ感があり、昨今のメタルで必要とされる音色をしっかりクリアしている印象です。白と黒の二色がラインナップ。
JIL2を…
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BIL2-M-HS TBS Boundary ILIAD
3グレードの中で最も下位に位置するBoundaryシリーズ。こちらはテレキャスターに近いシェイプを持つILIADモデルで、バスウッドを使用した軽量なモデル。HSという型番の通り、ネック側にハムバッカーを使用し、コイルスプリットも完備することで、音色のバリエーションは見た目以上のものを持ちます。実売価格5~6万円程度の品でありながら、サークルフレッティング、コンパウンドラディアス指板など、構造部分は上位モデル譲りです。
BIL2を…
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MSA-HP AS Masterfield
フジゲン製のセミアコースティックギターMSAシリーズは、セミアコの王者とも呼べるGibson ES-335に比べ、小柄な日本人には適したやや小ぶりなサイズで作られています。ピックアップにはフジゲン純正のアルニコ3を搭載。ホロウボディ特有の甘い音の中に若干のエッジを感じるサウンドは絶妙で、国産のセミアコとしてもっとも使いやすい一本に挙げられるでしょう。メイプルのトップとローズウッド指板の組み合わせもES-335譲りですが、重量はかなり軽く、それによる優れた演奏性も魅力です。
Masterfield MSA-HPを…
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アルダーボディ、メイプルネックの典型的なストラト。ピックアップにはフジゲンオリジナルのFGN 63VSが3つ装備され、トラディショナルなストラトサウンドを創出します。フレット数だけは現在のプレイスタイルを考えてか22フレット仕様を採用。数あるストラトのコピーモデルの中でもコストパフォーマンスの高い一台と言えるでしょう。
Masterfield MSA-HPを…
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EXPERT FLAMEとODYSSEYの二種についてはウェブ上でセミオーダーを完結できるフォームが備わっており、そこから自分のモデルを直接オーダーすることができます。
指板にはメイプルとローズウッド。ボディにはアルダー、アッシュ、マホガニー。トップ材としてフレイムメイプル、キルトメイプルから自由に選ぶことができます。外見の要ともなるボディ、ピックガードのカラーリングについても多彩なバリエーションが用意されており、ピックアップ配列やハードウェア、ピックアップの種類についても数種類の候補が提示されているため、その可能性はほぼ無限と言って良いでしょう。通常の工房にオーダーするのに比べ、大幅に低価格で抑えられており、敷居が低いのも嬉しい点です。
オーダーで作られた一本は、量産品に付けられる「FGN」とは違い、唯一のものであるという証明として「Fujigen」というロゴがヘッドに配置され、特別感を醸し出してくれます。
国産のメーカーだけあって、作りが丁寧で、日本人にあった製品を中心にラインナップしている印象です。突き抜けた個性的なモデルこそありませんが、オールマイティにこなせる優秀なギターが並んでいるので、色々なジャンルを演奏するプレイヤー、あるいは初心者の一本としても最適でしょう。
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