〈音楽活動〉事務所所属とエージェント制度ってどう違うの?[記事公開日]2020年11月4日
[最終更新日]2021年06月17日
[ライター]kato

事務所所属とエージェント制度

 

音楽活動をしているアーティストで「事務所に所属しなくてはけない」そう思っている方も多いのではないのでしょうか。

勿論、事務所に所属することのメリットもあります。

しかし、「事務所に所属しなくてはいけない」という考え方は実はもう古いのかもしれません。

「エージェント制度」という言葉をご存知でしょうか。

事務所に所属するという考え方の真逆をいくのが「エージェント制度」です。

今回の記事は「事務所所属」についてと今話題の「エージェント制度」について詳しく書いていきたいと思います。

なぜ事務所に所属するのか

音楽活動を展開していく中で漠然と「事務所に所属する」ということを目標にしている方も少なくありません。

ではなぜ事務所に所属すると良いのでしょうか。

事務所に所属するメリットをまずはまとめてみたいと思います。

事務所に所属するメリット

①音楽活動以外の雑務から解放される

どこの事務所にも所属せず、フリーで活動するアーティストは音楽活動以外の雑務も自分たちでこなさなくてはなりません。

ライブのブッキング、フライヤーの制作、ホームページの更新、SNSの管理、予約の管理、お金の管理、数え上げればキリがないほどに雑務はあります。

楽曲制作とライブに注力したいのに、その他の雑務に追われ楽曲制作の時間が確保出来ない。そういった悩みはインディーズのアーティストに多いと思います。

事務所に所属する一番のメリットは、事務所に雑務をやってもらうことで自身は楽曲制作やライブに専念できるという点でしょう。

②安定した収入が得られる

事務所と専属契約を結んだ場合、固定給が支払われる場合があります。(固定給が貰えない事務所や契約の形態もありますが)

その場合、基本的にはCDのセールスやライブの動員の上下に関係なく一定の給料が支払われます。

例えば「新しいCDをリリースしたけど全然売れなかった」「ツアーの動員が思ったよりも伸びなかった」など本来であればアーティストの経済に大打撃を与えるような場合でも、変わらずに固定給が貰えるというのはとても有り難いことです。

売り上げが立たない状況が続けば、当然契約は切られますが、会社に雇われて守られているという面はやはり事務所に所属するメリットと言えるでしょう。

③大きな仕事を持ってきてくれる

事務所所属のメリットとしてもう一つ大きいのは、個人ではアプローチ出来ないような大きな仕事を持ってきてくれることです。

例えば、有名音楽番組への出演だったり、ドラマのタイアップであったりといったものです。

勿論、その事務所のネームバリューや持っている力にもよりますが、大きな仕事に繋がるチャンスをくれることも期待出来ます。

ここからは逆に事務所に所属するデメリットについて考えていきたいと思います。

事務所に所属するデメリット

①決定権がアーティストにない

事務所に所属するということは、会社に雇われるということですので、基本的に最終決定権は事務所にあります。

楽曲制作においても、アーティストビジュアルにおいても様々な指示がされますし、アーティストも意見することは勿論出来ますが、何でも好き勝手に出来るということはあり得ません。

そういった制約にストレスを感じるアーティストも少なくありません。

②売り上げを持っていかれる

当然ですが、ライブの収益、グッズの売り上げ、チケットのチャージバックがそのままアーティストの手元に入ることはありません。

お金も全て事務所が管理して、そこからアーティストへ給料が支払われます。

先ほど固定給が貰えるのはメリットと書きましたが、これはやはり一長一短で、デメリットにもなり得るわけです。

売り上げがいくらか上がったとしても固定給には全く反映されないことも少なくありません。

アーティストの印税収入はビッグアーティストでも3%〜6%、新人の場合は0.5%〜1%と微々たるものです。

音楽業界に限った話ではありませんが、事務所とのお金にまつわるトラブルは後を絶ちません。

エージェント制度とは

これに対してエージェント制度というのは、事務所に所属することと全くの逆です。

事務所に所属するというのはアーティストが事務所に雇われているのに対し、エージェント制度ではアーティストが雇う側になるのです。

ライブのブッキングをしてくれる人だったり、ホームページを制作してくれる人だったり、アーティストの雑務を担ってくれるそれぞれれの専門家、代理人(エージェント)を雇うのです。

欧米では広く取り入れられているスタイルで、事務所に所属するのではなく自身でエージェントを雇って活動しているアーティストが多いです。

レディーガガさんがエージェントスタイルで成功したのは有名な話です。

日本では吉本興業でも「専属エージェント契約」を導入し話題となりました。

ここからはエージェント制度のメリットについて見ていきたいと思います。

エージェント制度のメリット

①活動の自由度が大きい

エージェント制度の場合は基本的にアーティストがエージェントを雇うという形態なので、決定権は全てアーティストにあります。

エージェント側は雇われている側なので、提案や助言をすることはあってもアーティストに強制することは基本的にはありません。

 

事務所に所属している場合は、楽曲制作からプロモーションまで様々な指示がなされます。

時にはアーティスト側が我慢して事務所の方針に従うといったケースもあるでしょう。

エージェント制度の場合はそういったストレスは一切ありません。

全ての決定権がアーティストにあるというのはエージェント制度の最大のメリットだと思います。

②組む相手や仕事先を自分で決められる

事務所に所属している場合は、事務所が仕事をお願いする相手を決めていきます。

「次の宣伝担当はA氏」

「次のジャケットをお願いするのはB氏」

といった具合に基本的に事務所が取引先を決めていきます。そうするとやはり事務所の決断がアーティストにとって本意ではないということが起こり得るのです。

 

「本当は違う人にジャケットをお願いしたかった」とアーティストが思っても会社の意向で通らないといったことがあるわけです。

エージェント制度の場合はアーティストが雇う側なので、当然一緒に仕事をする相手も自分で決めることが出来ます。

自身の音楽をマネタイズしていく仲間を集めてチームにしていくといった感覚に近いかもしれません。

エージェント契約のデメリット

ここからはエージェント契約のデメリットについて見ていきます。

①全て自己責任

全ての決定権がアーティストにあるということは裏を返せば全ての責任を担うということでもあります。

自分がお金をかけたいところにお金を使って自由にプロモーションもすることが出来ますが、全く売れず大損失だったとしても誰も守ってはくれません。

その中で、エージェントに報酬も支払わなくてはいけないので、自由である反面、リスクもそれなりに背負わなくてはなりません。

②大きな案件の仕事を取ることが難しい

フリーランスのアーティストがエージェントとして雇う場合は、相手もフリーで活動している人が多くなってきます。

そうすると、大手の会社との仕事といったものは生まれにくくなっていきます。

例えば先ほども書いたように、有名音楽番組への出演や、有名アニメのタイアップ、有名フェスへの出演権、といったものの話になった際に、やはり大きい事務所に所属しているアーティストに優先的に話がいくことが多いのです。

絶対に無理というわけではありませんが、エージェント契約のスタイルで活動する場合、大手企業との仕事を取るのは事務所に所属しているアーティストに比べると難しくなると言わざるを得ません。

③お金を自己管理しなくてはいけない

基本的には自分で雇ったエージェントに自分でお金を支払わなくてはいけないので、お金の管理をアーティスト自身が行わなくてはいけません。

そのため、事務所に所属するような「完全に音楽に集中」といった形からは少し遠ざかります。

取引先を自分で決め、自ら雇うということは必然的に音楽以外の雑務もある程度自分たちでこなすことになりますので、「音楽だけに集中したい」といったアーティストには不向きかもしれません。

まとめ

 

「事務所所属」メリット

・音楽以外の雑務から解放される

・固定給が貰える

・大きな仕事を持ってきてくれる

 

「エージェント契約」メリット

・活動の自由度が大きい

・決定権がアーティストにある

・組む相手は仕事先を自分で決められる

 

音楽活動をしていく上で事務所に所属するということは、当然メリットもデメリットもあります。

それはエージェント契約を結んで活動していくのも同様です。

事務所に所属して活動していくこととエージェント制度は表と裏のような関係でそれぞれ一長一短でどちらが良いとは一概には言えません。

 

昔に比べて、アーティストが自分たち自身で活動の仕方を選べる時代になりました。

事務所に所属せずとも、音楽を沢山のリスナーに届ける手段はいくらでもあります。

エージェント制度はアーティストの活動をより自由にして、可能性を広げてくれる素晴らしい制度だと思います。

 

漠然と「事務所に入れば何とかなる」といった考え方は間違っていますし、他力本願の姿勢では当然、事務所に入っても上手くはいきません。

アーティストが自ら、どういった活動を展開していきたいのかビジョンを明確にして、必要に応じた選択をしていくことが大切ですね。

ライター:kato

2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka

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