楽器店などでときおり開催される、著名ギタリストによる「ギターセミナー」や「ギタークリニック」。言葉は違えど同じ意味で使われているようですが、さて、どんなことが行われるんでしょうか。そんなわけで、お盆休みにケリー・サイモンさんが名古屋で開催するというギターセミナーを受講してきました。先日上梓したレッドハウス取材記事でも再三お名前が上がっていたケリーさんに加え、レッドハウス社長の石橋さんもいらっしゃる、超絶なイベントでした。
会場となったのは、愛曲楽器アピタ長久手店です。求めやすい入門機からこだわりのハイエンド、注目の新製品まで幅広く揃えています。セミナーを受講するお客さんが気になるギターを試奏する場面もちらほら(念のため申し上げますが、お店のお客さんが通り過ぎた瞬間を狙って撮影しています)。
アコギやウクレレも豊富。定番系ばかりでなく、しっかり攻めたニッチなものもストックしています。
ハード/ヘヴィ系のお客さんも多いらしく、そっち系のコーナーもしっかりとした品揃え。新製品もちゃんとカバーしています。
MASTER 8 JAPANの品揃えはコンプリートじゃないかっていうくらいで、アーティストモデルもしっかり並んでいます。愛曲楽器は同ブランドを展開する池田工業との付き合いが古いそうで、MASTER 8で愛曲楽器オリジナルピックを作っています(写真中央、パンダのピック)。
CD、DVD、クリアファイル。物販もしっかり。ケリーさんシグネイチャーのエフェクターも販売していました。
ケリーさんを象徴する「超絶」ロゴの切り文字ステッカーは、赤白黒の3色に大中小の3サイズ。縦書きと横書きの2タイプまであるという抜かりの無さ。
ここの慣例なのでしょうか、予約した順番に入場できます。受講者の確認ができるとともに、早く予約した人は好きな席が取れるという寸法です。入場してケリーさんの来場を待ちます。前から順に席は埋まっていきましたが、私は写真を取りたいので後ろの席を取りました。並んでいるのはケリーさんご本人のシグネイチャーモデル(左の2本)と、取材記事でもチェックしたサンプル。
このセミナーのためにわざわざ輸送したという、ケリーさん愛用のヴィンテージマーシャル。70年代の代物で、内部はいろいろと改造されているそうです。
紅白のストラトには名前が付いていて、赤い方は「レッドオーガー(赤鬼)」、白い方は「オデッセイ」とのこと。赤も白も、そんじょそこらの赤や白ではなく、ひと工夫、ひとひねりのあるオリジナルカラーです。
いよいよケリー・サイモンさん登場です。まずは挨拶代わりに、レッドハウスのHHストラトで1曲演奏してくれます。しっかり歪んだ音色で表現する、アーティキュレーションの妙技。レッドハウス訪問取材の時、まさにこのギターを弾かせてもらいましたが、「俺の時にはこんな音しなかったぞ!」というのが率直な感想です。人間の技術って大事なんだなあ、としみじみ感じました。
エフェクターボードをシミュレートできるというマルチエフェクター「HEADRUSH(ヘッドラッシュ)」。前半はこれをPAに直接送っての演奏です。フロアモニターからの返しを利用して、しっかりフィードバックもかかります。
店長さんがPAと司会を兼務、フリートークを交えながらの進行です。このセミナーは毎年恒例とのことで、和気あいあいとした雰囲気。ケリーさんは大阪のご出身とのことで、話術も達者です。受講者は近隣の方や初めての方、リピーターさんや遠方からわざわざいらした熱心なファンの方までいらっしゃったようです。
「ビブラートの解説をした後で、バラード曲の演奏」というように、演奏や音楽表現、音作りにおけるケリーさんのアプローチ解説があって、それを実践するデモ演奏、というセットがいくつか続く、という内容です。達人の指の動きを間近でじろじろとチェックできる、特別な時間。
「ネット拡散は自由にやっていいけど、演奏中の撮影は我慢してね」というのがこのセミナーのルールなんですが、その代わり「この演奏は録画してよし!」という演目もあります。ここぞとばかりにスマホを構える受講者の方々。
シグネイチャーモデルに持ち替え、どんなギターなのか、どんな経緯でレッドハウスと関わるようになったのか、といったお話も。いろいろなところで見かけるケリーさんのメッセージは、アーティストとしての熱を帯びたアツいものです。しかしここで見るケリーさんはトークが面白く、また説明のていねいな方でした。
レッドハウス社長、石橋さんを交えてのトークライブ。レッドハウスがどんなメーカーなのか、紅白のシグネイチャーストラトがどのようにして完成したのか、といった内容。受講者のほとんどがギター弾きなので、みなさん興味津津。
後半、いよいよヴィンテージ・マーシャルを、まずは70%の音量で鳴らします。
こちらはケリーさんご自身がプロデュースする「KS Effector」。ボードにずらっと並んでいますが、今回マーシャルに使用したのはTS系ブースターいっこ。他には何も使わない、リヴァーブすら使わない、ビブラートやピッキングニュアンスを全てさらけ出す、「パンツ一丁の演奏(ケリーさん談)」です。
そして最後は、50Wヴィンテージ・マーシャルの音量をフルアップ!すなわちボリューム「10」にしての演奏です。もちろんリヴァーブすら使わないブースター一個のみ、通常のライブでは聴けないサウンドです。物凄い音量と音厚、しかし滑らかなタッチによる美しいサウンドで耳は痛くない、そしてアンプのすぐ前で弾いているのにハウリングしない、これは超絶でした。
マーシャルから煙が出るんじゃないか、というくらいに大迫力だったフルアップの演奏で、セミナーは幕を下しました。そこからはケリーさんのサイン会、レッドハウス社長石橋さんによるオーダー/リペア相談会、二つを同時に行います。実際にオーダーを検討する人や、持参した楽器をリペアのために預けて行く人もいました。物販コーナーも活気づきます。
ケリーさんは、お客さん一人一人に対してていねいに接します。
サインを書いてもらうために、自分のギターを持ってきたという受講者さんも。
ケリーサイモン・シグネイチャーピックはウルテム製で、細かな模様は滑り止めになっています。愛曲楽器とケリーさんとの付き合いは長く、このピックは愛曲楽器のプロデュースで、店頭にて販売もしています。ティアドロップ型とJAZZタイプの二種類がありますが、今回はティアドロップ型のみ使っていたようです。
ケリーさんのお人柄でしょう、ご自身のギター、ご自身のエフェクター、ご自身のヴィンテージ・マーシャルにいたるまで、受講者はぜーんぶ触らせてもらえます。触らせてもらったところやはり、「さっき聴いたあの音にならないorz」という事実を確認するに至りました。
以上、ケリー・サイモンさんによる超絶ギターセミナーの体験レポートでした。たいがいの情報が検索できる現代において、わざわざ出向いて達人のプレイを目の前にし、さまざまな情報を直接受け取るということは、たいへんプレミアムな体験だと感じました。特にピッキングのフォームをしっかり見ることができたので、今後の練習の参考にしていこうと思います。
ギターセミナーは、上達したい人、プロの凄さを知りたい人、アーティストのことをもっと知りたい人、そういう人にとって非常にためになるイベントだと思います。皆さんも会場へ足を運んでみてください。
ライター:小林 健悟
「エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ 松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi
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