ORMSBY GUITARS – TX GTR
「《特集》ファンフレットのギターって、どんな感じ?(エレキギター博士)」の記事を作成する上で、ファンフレットについていろいろなことを勉強しました。その中で、ファンフレットを語る上で重要な要素の一つとして「ニュートラル・ポイント」というものが浮き出てきました。ニュートラル・ポイントとは、低音弦に向かって広がっていくファンフレットにおいて唯一、フレットと弦とが直交するところです。これには今のところ明確な基準がなく、12フレットや9フレットなど、メーカーやモデルごとにさまざまです。
ニュートラル・ポイントがどこにあるかは、単純な押さえやすさだけでなく、チョーキングの具合にこそ影響があります。今回はそこんところを考察していきます。
図:ニュートラルポイントでのチョーキングの模式図
ニュートラルポイントやその近辺でチョーキングする場合は、通常のギターでチョーキングするのと変わりません。フレットに沿って弦に力をかけると(赤い矢印)、弦は押されて張力が上がり(ピッチが上がる)ます。またチョーキング時の弦は、チョーキングする前よりも弦長が伸び(ピッチが下がる)ます。
ニュートラル・ポイント近辺でチョーキングを行う場合、弦長が伸びてピッチが下がるぶん余計に弦を押し上げて張力を上げている、と言うことができます。
図:ハイポジションでのチョーキングの模式図
ハイポジションでは力をかける方向が変化し、チョーキング時の弦長がニュートラルポイントの時よりも短くなります。
というように、張力も弦長もピッチが上がる方向に変化しますから、ハイポジションでのチョーキングは、ニュートラルポイントでのチョーキングよりもピッチを上げやすい、ということになります。ギターソロなんかで高音のチョーキングやらビブラート技なんかが大胆に表現できるわけです。
図:ローポジションでのチョーキングの模式図
いっぽうローポジションでは力の方向がハイポジションと反対になり、またチョーキングを上げれば上げるほど、ニュートラル・ポイント近辺以上に弦長が伸びていきます。よって、ローポジションでのチョーキングは、ニュートラルポイントでのチョーキングよりもピッチを上げにくい、ということを意味します。
しかし低音弦の場合には、握力を使って反対方向にチョーキングすることができます。この場合には、ハイポジションでのチョーキング同様にピッチを上げやすくなります。
例えば普通のギターでチョーキングを行うとき、
という違いが出ます。チョーキングはどのポジションでもそれぞれに握り加減や弦の抵抗がありますから、力加減だけではなく耳でちゃんとピッチを合わせる必要があるわけです。ファンフレットのギターでもそれは同じなのですが、こちらはポジションごとにフレットの角度が違いますから、だいぶ事情が異なってきます。
ファンフレットのギターはニュートラルポイントを境に、ローポジションとハイポジションで力をかける方向と上げやすさに大きな違いが出ます。あまり細かいことを気にせずに耳でピッチを合わせてしまえば何の問題もないのですが、ポジションごとのこうした違いをわきまえておくと、力まず無駄のない演奏を身につけやすくなります。ファンフレットのギターを弾きこなすためには、こうしたファンフレット特有の事情をチェックする必要もあるわけです。
ライター:小林 健悟
「エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ 松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi
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