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弾けまっせ!買えまっせ!サウンドメッセ2019レポート!!2019年5月31日 , ライター:小林 健悟

アコースティックゾーン

各社のアコギやウクレレ、個人製作家が魂を込めたブティックギターなどがずらりと並ぶ「アコースティックゾーン」。エレキギターほどにはルックスにバリエーションを感じにくいアコースティックですが、弾いてみるとそれぞれの個性に驚かされます。

アコギでもウクレレでも個性的なスタイルを主張する「アヌエヌエ」。中間色のカラーリングでとってもかわいい。

Vincent(ヴィンセント)

Momonashi -モモナシ-所属のJigen氏とのコラボ製品「テナーベース」を構えるVINCENT代表の小川浩司(おがわ・こうじ)氏。おそらくサウンドメッセで唯一のテナーベース。

ヤイリとのコラボレーションで個性的なモデル展開を繰り広げる「ヴィンセント」。テナーベースはミディアムスケールで、チューニングはA、D、G、C。コントラバスに対するチェロのイメージで、チェロに近い音域を持っています。スラップ対応のため透明なピックガードがついていますが、ジャカジャカかき鳴らすのにも良好です。1弦の細さに慣れは必要ですが、実際弾いてみるとボディの抱え心地以外、エレキのイメージそのままでいけるので、すぐに手に馴染みます。

アーティスト側から送られたベース用EMGハムバッカーは、いろいろ試した結果行き着いたものだとか。アコースティックエリアで長々と鳴り響くベースの音は、とても斬新。

ヒップショットがついていて、4弦をドロップできる。

超ニッチなテナーベースですが、和音プレイが聴き取りやすいほか、メロディアスなアプローチにも挑戦できそう。サウンドホールがないためハウリングの懸念が軽減された、アコースティックのエアー感のあるクッキリとした音です。音作りもしやすいから、ポップス系のバンドアンサンブルでも使える可能性を感じさせます。

ギターの新作はこの小型ガットギター。弦長もちょっと短めで、軽やかなサウンド。クラシックで多用される指を開く演奏も、これならしんどくない。

ちょっと前に発表された大型ボディモデル「VL-5」。ドレッドノートよりやや大きめのボディ幅で、サイド&バックはメイプル。ガッツンガッツンのストロークも気持ち良く響く。

《カフェとギター》VINCENT訪問インタビュー – アコースティックギター博士

Asturias(アストリアス)

クラシックギター製作からスタートしたという「アストリアス」ですが、現在では鉄弦も積極的にリリースしています。こちらは同社のヒット作で、「グランドソロ・プレミオ」と名付けられた大型のソロ演奏仕様です。シダートップ(右)とスプルーストップ(左)の2タイプは、立ち上がりや柔らかさといったキャラクターにハッキリとした違いが出ます。シダーは繊細で柔らかめ、スプルースは張りとギラ感があります。

どちらもカラッと軽く立ち上がる、弾きこまれたような反応の良さ。でかいのにスっと抱えられる、不思議な感触です。ソロギターを意識した設計とのことだが、ピックでかき鳴らしても気持ちの良いギター。

ドレッドノートよりも大きめのボディ幅ながら、エルボーカットのおかげで抱え心地は大変良好です。カッタウェイにもベベルが施され、ハイポジションの演奏にゆとりがあります。エルボーカットやカッタウェイには削り出したコア材を使用し、バインディングにもコア材を採用するこだわり。他モデルの生産量との関係もあって、シダートップ/スプルーストップ合わせて月に二本しか生産できません。

Ibanez(アイバニーズ)

サウンドメッセではアコースティック部門に注力している「アイバニーズ」。柔軟な開発力をしっかり見せてくれたのが、おそらく世界初であろう「左利き専用ギグバッグ」。写真右側が従来のもの、左側が新しい左仕様です。ハンドル位置、ファスナー方向などすべて反転しており、左利きのギタリストが利き手で自然に扱うことができます。

アコギ業界ではじわじわ浸透しつつある自由なカラーリングですが、ウクレレではまだまだナチュラル志向が主流。そんな中、こっちの分野ではチャレンジャーである同社では、バキバキに攻めたカラーリングも。バインディングはブルーのパーロイド柄です。

ベーシックな設計で使いやすいストラップ。中間色を主体にいろいろ選べます。ギターや衣装に合わせてストラップも選びたい。

こういうものを開発するのも、大企業ならでは。「エフェクターボードを組むほどではない数のペダルを運ぶキャリングケース」。シールドなど小物も収められるので、自転車や電車で移動する人にぴったりなのでは。かわいらしいルックスですが、内部の間仕切りは好きにアレンジでき、肩掛けのベルトに加え、背面にはスーツケース等のキャリーバーにひっかけるためのベルト、底面には滑り止めのパッドがついた高機能。

UEHARA ACOUSTIC GUITARS

ギリギリ大阪だが、田舎で一人で作っているという個人ビルダー上原康浩(うえはら・やすひろ)氏。肘当て、色の異なる木材を貼り合わせたブリッジ、2列のパーフリング、とても手の込んだ作りです。

サウンドメッセでは、個人製作家がじっくり作り上げたブティックギターも多く出展されています。ある程度の出荷数を必要とするメーカーではなかなかできない、精緻に作り込んだ美しいギターにはうっとりさせられます。

存在だけで大迫力の、5弦フレットレス仕様のアコースティックベース。「バイオリン属のイメージで作ったフラットトップ」というコンセプトで、指板のほとんどがボディトップに接しない「エレベーテッドジョイント」です。エレベからの持ち替えだと高めに感じられるであろう弦高にセットアップされていますが、アコベ的にはここがベスト。しかし敢えて低弦高に設定し、バズノイズをむしろ積極的に使用して民族楽器的に使用するプレイヤーもいるのだとか。

サウンドホールを兼ねるカッタウェイは、演奏性を確保しながらトップ板を活かすためのナイスアイディア。

フレットレスには、無段階にピッチを変えられるという面白みだけでなく、立ち上がりの柔らかい優しい音が得られるという魅力があります。本機からは「この楽器の音」というアイデンティティが感じられました。ブースのモニターはヘッドホンでしたが、アンプでしっかりとした音量で鳴らしたい。

Cole Clark(コール・クラーク)

  • スパニッシュネック(スルーネック)構造
  • ダブルAブレーシング

といった独自の構造と個性的な意匠が支持を広げている「コール・クラーク」。オーストラリア原産の木材を使った比較的新しいブランドですが、ジャック・ジョンソン氏、ジョニー・マー氏(ザ・スミスなど)、ベン・ハーパー氏、エリオット・イーストン氏(カーズ)ら大物アーティストの使用でも知られています。会場ではトップエンドーサーであるロイド・スピーゲル氏が、得意のブルースを披露するデモ演奏がおこなわれました。知っている人なら一聴して分かる「腰が低く鋭く立ちあがる独特のサウンド」は、ブルースにぴったりです。

トップ材に使用される「ブンヤ」、サイド&バックに使用される「ブラックウッド」など、メインで使用する木材はオーストラリア原産です。

エレアコとしての使用を前提としており、本体の強度とハウリング予防のためにボディ材は厚めの設定。ブンヤはスプルースよりずいぶん硬いので、さらにハウリングしにくいとのこと。ブラックウッドはトップ材に使われることもあり、オールブラックウッド・ボディのモデルはパーカッシブなサウンドを持ちます。

ピックアップシステムも作りこまれており、Brige(ピエゾ)とFace(マイク)のブレンドのほか、マイクのダイナミクス調整が可能。

独自開発「ナチュラル・ピックアップ」の感度が非常に高く、ネックやヘッドを叩く振動も拾うため「むしろカホンとして使える」という話も。ギターをたたいて演奏する「スラム奏法」が決まりやすいのは大きなアピールポイント。トップの振動を妨げにくい「ダブルAブレーシング」、外周部の6mm厚からサウンドホールに向けて徐々に薄くなっていくトップ材の工夫などによって、豊かな生鳴りとハウリング対策とのバランスもじゅうぶんに取られています。

K.Yairi(ケー・ヤイリ)

ウクレレのレギュラーモデルを来年から本格的に再開させるという「K.Yairi」。20本限定で製作したスペシャルなウクレレに注目しました。ホンジュラスマホガニーボディ、アフリカンマホガニーネックという贅沢なマテリアル、「このモデルのために仕入れた」という細かいヘリンボーン、そして杢がしっかり主張するフレイムメイプルのピックガード、という構成ですが、ブレイシングパターンを変更しており、これまでギターっぽい響きだったのが、よりハワイアン方向へと路線変更しています。高級感と裏腹に、軽快にコロコロ鳴ってくれる楽しいウクレレです。

昨年発表されたスペシャルカラーモデル(左)と、御代替わりを記念した「令和仕様特殊カラー」モデル(右)。こう見えて楽器本体は比較的低価格なので、新しいカラーリングで音の良いギター、というジャンルのとっかかりになるのではないかという考えで、今後も季節ごとなどで特別色は展開していくとのこと。

左側はサイド&バックにリンデン材(メイプルに近い)、右側のサイド&バックはマホガニーです。塗装は薄く、反応が早い、軽快に立ち上がる明るいサウンドです。軽快なストロークが特に気持ち良いですが、指弾きの繊細さも楽しめます。

《移り行く時代、変わらないヤイリ》ヤイリギター訪問取材~レギュラーライン編~ – アコースティックギター博士

ショップゾーン

サウンドメッセのひとつの目玉である、有名店が並ぶ「ショップゾーン」。街中を歩き回らなくても、ここに来ればいろんなショップを見比べることができます。もちろん試奏も大歓迎。各店オリジナルのギターにもバンバン触れられます。

ショップエリアに登場、1969年製レスポール。これこそが、いわゆる「バースト」の本物ですよ。裏側には1960年製も。ケースと鎖でガードされていて残念ながら試奏できませんが、ウン千万円の代物ですから、そうやすやすと触るわけにもいきません。

ドルフィンギターズ

Charo’s Guitars

弦長25インチのコンパクトベースが人気を集める「Charo’s Guitars」では、ヘッドレスギターもリリース。製作者の小森さん自らが応対してくれました。自営業からギター職人へ転身、一人で手作りして早5年。ドルフィンギターズに持ち込んだことから取り扱いが始まりました。じっくり作っているので通算20本ほどだが、良く売れるからいつも品薄とのこと。

弦長25インチ、スルーネック、ソリッド、ヘッドレス、という珍しい仕様。ピックアプはEMGのSSH。バック面も、こんなにきれい。アーム付モデルはフローティングセッティングで、大幅なアームアップにも対応。小さいけどトラベルギターではなく、ガチな仕様。

ネック先端にもフレイムメイプルの意匠が。専用弦は必要とせず、テナーウクレレのバッグで携行できる。

Switch

ヴィンテージではなかなか手に入れられない仕様をメイドインジャパンで作る自社ブランド「Switch」。スタンダード路線でありながら、コンセプトを立たせてニッチなところをカバーしたマニアックなモデルも目立ちます。中央の迷彩風フィニッシュは、マスキングして塗装してマスキングして、を繰り返すため、手間がかかりすぎてもう作らないという最後の一本。塗装は薄く抑えているそうで、新品でも軽快に鳴ります。本家と比べても遜色ないことから、マーチンやギブソンから買い替えるユーザーもいるのだとか。

これは60年代後半に作られていたという「ナット幅39インチのナローネック」仕様。レコーディングではカッティング用として重宝されるが、ヴィンテージでは入手のハードルが高い。

その名の通り、ネックはエレキギターよりも細い未体験の細さ。でかい手でもちゃんと抑えられるギリギリの細さかもしれませんが、フレーズ弾きやアルペジオも良好です。セラミック製サドルは高さが調節できます。そして本体がものすごく軽量。カラカラと軽快に鳴ってくれて、思い切りかき鳴らすのにとても気持ちの良い音です。本機はトリファイド(熱処理により木材の収縮を抑え、ヴィンテージの風合いを加える)したアディロンダックスプルーストップ、ホンジュラスマホガニーサイドバックという贅沢仕様。

Blue Guitars

stilbluを牽引する若きマスタービルダー、水上正太(みずかみ・しょうた)氏。「ブランド発表から丸一年で45本を作りましたが出だしは好調で、やっていることは間違いではないと感じています。」

ギターセレクトショップ「ブルー・ギターズ」では、選び抜いたギターたちに加え、自社ブランド「stilblu(スティルブルー)」の新作が注目されていました。

新作「IRIS(アイリス)」は、ミディアムスケールとショートスケールの2タイプ。レトロ感のあるピックアップとマッチした可愛らしいカラーリングが印象的ですが、これはサンバーストの上から塗りつぶした「マルチレイヤーカラー」で、使っていくうちに味わいが出て育っていきます。

手に取って弾いてみたくなるカッコよさ。

USA製「ビクトリー・ピックアップ」は昔ながらのルックスと現代的な性能を兼ね備え、太さのある素直なサウンドです。ブリッジはこのモデルのために特注、サドルはGOTOH製「インチューン」で、3連タイプながらピッチはバッチリです。

右が新品、左は使い込んで育ってきたピックガード。

「日本製の楽器本体、富山の伝統的な発色技術を使ったパーツ」というブランドコンセプト。ピックガードは高岡銅器の技法で着色されますが、着色を担当する「モメンタムファクトリー・Orii」には新しい色を出せる独自の技術があり、今後も楽しみです。

g’7 Guitars(ジーセブン・ギターズ)

ヴィンテージ・ギターを多く取り扱っているギターショップ「G SEVEN GUITARS」では、40年積み重ねたノウハウを生かしたヴィンテージレプリカがずらり。「ジーセブン」と誤読されることが多いそうです。

ヴィンテージファンでは知らない者はいないと言われる「g’7 Guitars」。レスポールタイプは100万円近くする超高級品ですが、フェンダースタイルには30万円近辺のものも。例えば写真中央のジャズベースでは、弾いてすぐわかるほど本体がしっかり作られており、標準的なピックアップを使いながらも強く前に押し出すサウンドが得られます。密度の高いサウンドを基本としつつ、たまにイナタい荒い音が混じる、やや暴れる感じが演奏に絶妙なニュアンスを付加します。ハイポジションではメロウに響き、音の伸びも十分。

「40年前からヴィンテージと関わり、バラしたり塗装したり、いろいろなことをしてきました。バーストの塗装をはがしたことまでありますが、そういう経験を今の人が同じようにできない以上、自分のノウハウを活かした仕事は私にしかできません。」と語るのは、社長の大山敬記(おおやま・たかのり)氏。

大山「『世界でだれにも負けないレプリカだ』と自分で言っている以上、回路をあけられても塗装をはがされても、内部を分析されても恥ずかしくない、常に最高のマテリアルで、最高のものを作っています。弊社のギターは、たとえバーストが相手でも、こっちでいい、むしろG’7のほうがいい、と言わせるだけの音を持っているし、そういう評価も得ています。」

大山「クラックについても、しっかり意図的に入れています。どこでだれがいくらで買って、最初の傷はどこについて、最初の傷から広がっていくヒビからどう展開していったか、といった”ギターの歩んだストーリー”を考えるんです。ネジ一個までしっかりエイジングしています。」

g7-LPC。まず楽器本体の貫録がすごいが、サウンドにはトルク感があり、中低域がしっかり整理されている抜けの良さがある。何を弾くでもない、鳴らすだけの音がすでに気持ち良い。

大山「塗装と組み込みは自社で施工しています。ナットはデルリン製で、加工は手間だがここまでシビアにセッティングを追い込むためには、ベターな素材だと判断しています。レプリカで世界一を自称していますが、性能を求めると牛骨にはこだわりません。

ブリッジとサドルはブラス、テールピースはアルミの削りだしで、これはオリジナルにもない仕様です。超高精度金属加工の専門業者(株式会社トキワ)に特別に依頼しており、オリジナルより性能が良いパーツができました。しかし、ブリッジ単体の原価が6倍になりました(笑)。」


以上、全体の中ではほんの一部ですが、「サウンドメッセ2019」で触れることのできた楽器をご紹介しました。ふだんなかなか見たり触ったりする機会がない楽器に触れるだけでなく、まさにその製品専門のスタッフさんからいろいろな知識を吸収することのができ、とても勉強になりました。普段ならちょっと手が出ないようなハイエンドモデルでもバンバン触らせてくれる、オープンな空気感にあふれた活気のあるイベントです。面白そうだと思った人はぜひ来年、ことし行ってみて面白かったという人はまたぜひ来年も、会場に足を運んでみてください。

ライター:小林 健悟

エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ  松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi