「信州ギター祭り2020」国産ハイエンドが集まる夢の展示会[記事公開日]2020年12月5日
[最終更新日]2020年12月5日
[ライター]小林 健悟

Black Smoker

トラッドなスタイルに新しさを吹きこむ「ブラック・スモーカー」。ピックアップや塗装、重量バランスなどさまざまなポイントに対し、現場で活躍するミュージシャンから吸い上げたアイディアを反映させることで「欲しいサウンドがちゃんと出る」ギターを作っています。

王道のスタイルから、

ちょっとモダン寄りモデル、

トラッドなボディに2点支持トレモロとタップスイッチ、

バリっとモダンなスタイルまで。

何と斬新な。7弦2ハムのTLスタイル、トーンなしのホロウボディでこのカラーリング。

SIGMA(Trad Master Series)

SSH配列だが、敢えてタップスイッチを排した、トラッドな操作系を持つモデル。録音ならまだしも「ライブでタップスイッチは使いにくい」と感じるプレイヤーのために考案したのだとか。リア+センターでは自動的にコイルタップが起動します。

「トラッド・マスター」シリーズはヴィンテージ・スタイルを踏まえ、塗装は総てラッカーです。「弾きやすいのに、ちゃんと鳴る」を追求したセットアップによって、10-46ゲージ弦なのにスイスイと指を運ぶことができます。太いゲージ弦のポテンシャルを活かしながらテンション感を抑えたという、絶妙な完成度です。

ステンレス製のジョイントプレート。トルクをかけて締め込みたくない、適度な締め込みでしっかり密着してほしい、という考えに最もマッチしているのだとか。控えめにも見えるヒールカットだが、最終フレットまで使いやすい、必要十分の設計。

美しく整った、触り心地の良い指板。

「b」の1文字だけが刻まれた、クールなヘッドデザイン。

ブランドロゴを裏側に刻む、シブい意匠。ヘッド裏はツヤツヤ仕上げですが、この付け根部分からネック裏のサラサラ仕上げへとグラデーション的に移行します。

Red House

ヴィンテージギターを数多く扱い、オーディオのノウハウも積み上げた、質実剛健なギターに評価が高まっている「レッドハウス」。現場の要求に応える道具として優秀なギターには、鳥のくちばしのようにカットされたピックガード (平和の象徴である鳩のイメージだそうです)、ボディエッジをカットする「ベベル」工法など、ちょっとしたところで遊び心をチラ見させる「ゆとり」も感じさせます。

レッドハウスの名を全国的に知らしめた、超絶プレイヤーKelly Simonz(ケリー・サイモン)氏のシグネイチャーモデル。

ディンキータイプ「Seeker S」。ボディトップ材はトップグレードの「ヴィンテージフレイムメイプル」とのことで、ものすごい迫力。ベベル工法は、楽器の個性と工程の効率化を両立する。

「CASANOVA」。リッケンバッカー風プロトタイプだが、ボルトオンジョイント、ダミーのFホール、P-90タイプのピックアップ、ラップアラウンドブリッジ、25インチスケールという具合で、完全なオリジナルモデルとして仕上がっている。

オリジナルモデル「Alba Hollow」。Fホールは無いが、ボディはホロウ構造。フェンダースケールよりちょっとだけ短い「25.25インチ(ニコニコスケール)」という弦長も特徴。

シックな外観に高級感を帯びる「Piccola T Hollow」は、ホンジュラスマホガニーボディ&ネック、335サウンドを狙ってローズウッドプライウッドトップ、という贅沢な木材構成。

ちょっとずつ仕様とエイジド加減の異なるストラト。近年再評価されているSSH配列ですが、やはりSSSも捨てがたい。「どれも個性的な音を持っています」と語る、社長の石橋さん。

Alba Gold Top

社長の石橋さんが音で選ぶ、弦の響きがバランス良く響く「イチオシ」という一本。

ヘッドロゴに、ちょっとした遊び心が(上)。レッドハウスの独自構造「HVC(ヘッド・バイブレーション・コントローラー)」もしっかり採用(下)。ヘッド裏に強化材を埋設することで、ヘッド部分の振動を調正しています。

目の整ったアルダーボディ。ジョイントはプレートを使用しないモダン仕様。

響きがとても素直で、ストレートにスパーンと飛んでくるハムバッカーサウンド。1弦から6弦までバランスの良い出音です。アルダーのソリッドボディにしてジャズトーンが余裕で得られる豊かな低域がありながら、リアに切り替えるとパリッパリのファンキーなサウンドも得られます。

「音を狙って作る」Red House訪問インタビュー – エレキギター博士

試奏ルームにはこんなアンプが

SHINOSとLee Custom Amplifier、二つのアンプメーカーがコラボして生まれた高性能小型アンプ「ROCKET」。良いギターは良いアンプで試さなければ。コレはサンプルなので、外装はシックな仕上げ。

各社のブースでも試奏はできますが、しっかり検討したい人向けに、15分の予約制で試奏ルームが設けられていました。設置されたアンプはSHINOSの新作「ROCKET」。コンパクトながらリバーブとトレモロが付いて、その他の便利機能もいっぱい。「このアンプも欲しい」という来場者も。

ご自宅でささやかに最高の音質を楽しめる「パワー・アッテネーター」装備。そのほか分かる人にはわかる多機能ぶりの背面。

背面に穴が開いているのも、音のために重要な設計なのだとか。

隣の試奏ルームには、製品版の「ROCKET」が。2種類のパワー管のほか、外装カラーも選べる。

《音の良さと、現場での強さ》ギターアンプメーカー「SHINOS」訪問インタビュー – エレキギター博士

「展示」と「イベント」の2会場

第二会場にて、T’s Guitars高橋社長によるトークショーという名目で開催された、ギターの保管やメンテナンスについての講座。近年改められたという最新の弦高チェック法、指板Rごとのセッティング、ピックアップの望ましい高さ、暖房に石油ストーブを使うのかエアコンを使うのかで湿度が違うなど、大事なギターのメンテや保管に悩む来場者さんたちは真剣に聞き入っていました。

今回は、第一会場にて約150本のハイエンドモデルが立ち並ぶ展示即売会、第二会場にてトークショーやオーダー会、ギター製造の実演など、各種イベントが開催されました。両会場の移動に要する時間は歩いて数分。


以上、「信州ギター祭り」の模様をご紹介しました。こうした展示会は、この日のためのスペシャルなギターに触れることができるのが第一の醍醐味です。画面越しではなく間近で見て、触ってみるという体験には大きな意味があります。特に今回は各社のギターから、大型の展示会が軒並み中止させられてきたうっぷんを晴らすかのような、ほとばしる気合を感じました。

これに加え、それを企画開発したり作ったりしているご本人から直接話を訊く体験ができるのも、大きなポイントです。職人さんの人柄に触れることで、ギターの魅力が倍加します。「ああ、いつかはこの人に作ってもらいたいなぁ」なーんて思うわけですよ。

90分という制限時間の中、キッチンタイマー持参で時間をスパスパと細かく刻んでいくタフな取材でしたが、おかげで全社を公平に巡回できました。人数制限のため会場内の雰囲気は落ち着いており、試奏や商談がスムーズにできる印象でした。「怪我の功名(けがのこうみょう)」という言葉があります。感染防止のためやむなく採用された「時間帯予約制」は、思いがけず奏功したようです。

コロナショックからの回復は見られてきましたが、今なおギター市場はちょっとした混乱にあります。特に海外から運ばれてくるギターは製造や運輸の足が重たく、在庫が無いものに関して次の入荷時期が見えないものもあります。しかし、日本のメーカーはすでに本来の生産ペースを取り戻しています。ギターが欲しいと思ったら、特に今の時期はなおさら日本製がおすすめです。

ライター:小林 健悟

エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ  松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi

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