KORNギタリストMunky(ジェームズ・シャファー)の軌跡とギター・ワーク[記事公開日]2024年11月30日
[最終更新日]2025年05月7日

Follow the Leader
Korn 3rd Album「Follow the Leader」

『KORN Munky』ことジェームズ・シャファーは、1990年代初頭のバンド結成以来、トレードマークであるダウンチューニングした7弦ギターと過激なエフェクト・サウンドでニューメタル・シーンを牽引してきたギタリストです。長寿バンドながら精力的に音源をリリース(最新作は2022年『Requiem』)、音作りや演奏テクニックなど中級ギタリストが学べる事は大いにあります。

本記事ではMunkyのキャリアを時系列でたどり、各アルバムでのサウンド傾向と使用機材の変遷、リフ制作の考え方、代表的なステージ・パフォーマンスを具体例を交えて解説します。

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キャリアの歩み:結成から現在まで

Munkyは1993年、ブライアン・ウェルチ(Head)らと共にカリフォルニアでKORNを結成。1994年発表のデビュー作『Korn』では、7弦ギターを用いた超低音リフとロス・ロビンソンの演出によって「ダウンチューニング × エフェクト」のサウンドを確立しました。Ross Robinsonプロデュース下の初期2作では、工房で改造されたファズやワーミーペダルを駆使し「すべてのエフェクトをフルアップで使え!」の指導のもと、当時としては斬新なギターサウンドを生み出しています。


Korn – Blind (Official HD Video)
ファーストアルバムの1曲目にしてKornの代表曲でもある

90年代後半には『Follow the Leader』(1998)、『Issues』(1999)で世界的人気を獲得し、特に『Issues』には本人が購入した中古のMarshall Plexiを用いたヘヴィトーンも投入。1999年のWoodstockでの観客の熱狂を経て、KORNはシーンの頂点に立ちました。


Korn – Freak On a Leash (Official HD Video)
ニューメタルシーンの頂点に

Head(G)、David(Dr)の脱退

2000年代以降も活動は続き、2005年にHeadが脱退するとMunkyは当面自身で2人分のギターパートをプレイし続行。2007年David Silveriaが脱退した後もバンドは新機軸を模索し、2007年の『MTVアンプラグド』でアコースティック・アレンジを披露。2010年『Korn III: Remember Who You Are』では原点回帰を果たし、2011年『The Path of Totality』では初のダブステップ要素導入と同時に7弦を使わない標準チューニングでアルバムを制作。


Korn – Never Never(2013)

Headの復帰

2013年にはHeadが復帰し、2016年『The Serenity of Suffering』、2019年『The Nothing』、2022年『Requiem』と近年も重厚なハードロックサウンドを追求しています。リリースごとに新旧の要素を融合させながら進化を続けるMunkyのキャリアは、まさに「常に挑戦してきた」歩みと言えるでしょう。

スタジオアルバム別:ギター音作りと使用機材

初期:Ibanez Universeとラフな音作り

KORN初期(1994-1996)のアルバムでは、当時入手が困難だったIbanez Universe7弦ギターをメインに使用しました。Munkyは「当時、Ibanezは7弦の製造をやめていたが、Ibanez側から“Universeを復活させたい”とオファーがあり、そこからずっとIbanezを愛用している。Universeは自分をここまで導いてくれたギターだ」と語っています。

音作りではRoss Robinsonのアドバイスでアンプをフルアップにし、手作りファズやワーミーで稲妻のような歪みを連発。名盤『Follow the Leader』(1998)録音時には、初めて専用スタジオでの制作に予算を投じ、ホワイト・ノイズのようなワーミー効果音を多用するなどサウンド実験を加速させました。

2000年代:マーシャル・サウンドと拡張

2000年代に入るとサウンドはさらに幅を拡げます。2002年『Untouchables』からはプロデューサーのブレンダン・オブライエンの影響も受け、Munkyは改造マーシャルPlexiを取り入れて安定感のある歪みを追求。対照的に、2005年『See You On The Other Side』ではヘッド脱退の影響で本人1人でギターを構成し、思い切ったポップ感と重低音のバランスを模索しました。

2010年代のアルバムでも機材は柔軟に変化し、近作ではMesa/BoogieやBogner、Diezel VH4など複数のヘッドを三重録音することで厚みのあるトーンを作り出しています。例えば2019年『The Nothing』では、Mesa/Rectifier、Bogner Uberschall、Diezel VH4を同時に使用し、各ギターアンプをミックスした超重低音サウンドをレコーディングで実現しています。このように、アルバムごとにエフェクトやアンプ選びを変え、常にサウンドを再定義してきました。

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2010年代以降:新機軸とSignatureモデル

Ibanez APEX200
2013年発売のシグネチャーモデル「Ibanez APEX200 Munky Signature Model」

近年の録音では新しい要素も加わります。2011年『The Path of Totality』ではバンド初の標準チューニング(7弦を使わない)でアルバムを制作し、「2度下げから元に戻してみたらギターの鳴りが良くなった」とMunky自身も語っています。

また、2019年頃からは自身監修のシグネチャーIbanez「APEX」シリーズ(APEX200、APEX100ほか)を使用。特に2020年発表のAPEX30ではEverTuneブリッジを採用し、「スタジオでチューニングに費やす時間がなくなった」と報告しています。

ライブでの使用にも耐える安定性を追求した結果、現在までIbanezギターはMunkyのメイン機材となっており、特注仕様のピックアップやニュートロン・バー(変形ワーミーバー)など、往年の演奏スタイルを踏襲したギターづくりも特徴的です。こうしてMunkyは機材を更新しつつ、一貫してパワフルかつ個性的なギターサウンドを追求しています。

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リフ制作・7弦ギター活用の哲学

Munkyのリフ制作には、奇抜なコード進行と高音側の音響表現を重視する独特の哲学があります。彼は「最初に奇妙なコード・ボイシングやリフの3/4を作り、Headがそれにメロディやフレーズを乗せる」と語り、また「ペダルで音のテクスチャを探し、曲がある音から構成されることもある」と述べています。

高音弦の使い方も革新的で、「新しいプレイヤーには上の方の弦を使えと言っている。従来の定石に囚われず、音響デザイナーのようにリフの低音と高音側のノイズを組み合わせて遊んでみろ」と助言しています。

実際、7弦ギターの低域リフの上でチョーキングやワーミーを使い猫の鳴き声のようなノイズを鳴らす手法や、ピックやフィンガーのこすり音をリフに組み込む手法は、Munkyが築いたスタイルのひとつです。

使用ギター

また、KORN結成以前から7弦にこだわりを持ち続けてきたことも特徴で、6弦ギターでは再現できない独特の重量感が彼のサウンドの土台です。実際にMunkyは「沢山の会社が7弦を出しているが、自分はIbanezに惚れ込んでいる。Ibanezこそ、自分をここまで連れてきてくれたギターだ」と語っています。

一方で、スタジオでのオーバーダブ(重ね録り)にはフェンダー・ストラトキャスターやギブソン・SGのようなクリーントーンのギターを併用し、「低音弦のゴリゴリしたリフの背景で、上音弦のクリアなフレーズが“リフを大きく聴かせる”効果を生む」と説明しています。

このようにMunkyは、7弦ギターによるパワフルさと、伝統的なロックギターの響きをバランスよく使い分けることで、幅広いサウンドを作り出しています。


Korn – ‘Falling Away From Me’ live – BBC Radio 1 Rock Show


KORNのジェームズ “Munky” Shafferは、結成から現在に至る約30年間、常にサウンドのフロンティアを切り拓いてきたギタリストです。初期から受け継がれる7弦ギターとエフェクト重視の音作り、Munky独自のリフ制作手法は、現代の中級ギタリストにも多くの示唆を与えます。彼のキャリアを振り返ることで、時代ごとの機材選びの工夫や演奏哲学が見えてきます。

KORNは最新作でも重低音サウンドと奇抜な音響表現を進化させており、Munkyはこれからもその中心でプレイヤーを驚かせてくれるでしょう。中級ギタリストはMunkyのアプローチを学び、7弦ギターやテクスチャ表現を取り入れて演奏の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

参考文献:
Munky本人へのインタビュー記事(Reverb News、Premier Guitar、Guitar Worldなど)。

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