近年ではミュージシャンや芸能人が事務所から独立するといったことが頻繁に起こっています。
有名なところだとNEWSの手越祐也さんがジャニーズ事務所から独立し、とても話題になりました。
音楽業界においても、有名アーティストが個人事務所を立ち上げ独立するといたケースが今は非常に多いです。
では、なぜ事務所を抜けてわざわざ独立するのでしょうか。
今回の記事はミュージシャンが独立する理由、そのメリット、デメリットについて詳しく解説していきたいと思います。
事務所に所属している場合は、事務所から固定給を支払われるケースと歩合制のケースがあります。
いずれにせよ、事務所を仲介するので、CDの売り上げやライブの売り上げがダイレクトにアーティストの手元に入ってくることはありません。
事務所を抜けて独立して活動した場合、基本的に売り上げは全てアーティストの元に入ります。
「メジャーよりインディーズの方が稼げる」なんて話を耳にするのもその為です。
「じゃあみんな独立したほうが良いんじゃないの?」と思うかもしれませんが、事はそんなに単純ではありません。
独立し個人でやっていこうと思ったら、ライブ会場の手配、チケットの手配、スタッフの斡旋、売り上げの管理、税金の申告など、膨大な雑務をこなす必要が出てきます。
つまりは事務所にお金を支払うことで、こういった音楽に直接関係のない業務をやってもらっているのです。
活動規模の大きいミュージシャン程、こうした雑務の量も多くなるでしょう。
ミュージシャンが独立するということは決して簡単なことではないのです。
これが独立の一番の理由であることが多いです。
事務所に所属しているということは、アーティストの音楽もアーティスト自身も「会社の大切な商品」になります。
そうなってくると、当然、アーティストは何でも好き勝手には出来ません。
場合によっては曲の歌詞を書き換えなければいけない時もありますし、髪型やファッションも自分の思い通りには出来ないこともあります。
アーティスト(表現者)の多くは、「自由に自己表現できる音楽」が好きでプロを目指している方が大半だと思います。
しかし、大きな事務所に所属し「仕事として音楽をやる」ということになると、自由に好きな音楽をやれないことが多いのです。
これはアーティストにとって恐らく一番のストレスでしょう。
やりたい音楽が出来ず、事務所と揉めて独立したという話は本当によく耳にします。
基本的にアーティストが事務所から独立する大きな理由は①の「お金」と②の「活動の自由度」のケースが殆どだと思います。
そして、近年では「事務所に所属するメリットが少なくなってきている」といった理由が挙げられます。
昔は事務所やレーベルが巨大な力を持っていました。
事務所はお金も持っていましたし、TV出演、タイアップ獲得など、個人ではアプローチ出来ないような活動を展開してくれていました。
勿論、今でも事務所を通さないと取れない仕事もありますし、強い権力を持った事務所もまだ存在しています。
しかし、近年ではSNSやYoutubeの普及で、個人のアーティストの発信力が強くなりすぎてしまったのです。
テレビ出演やタイアップは勿論宣伝効果は高いですが、昔に比べると若者がテレビよりYoutubeを観るようになった為、テレビの影響力は衰退してしまいました。
テレビの宣伝をする為に、タレントが有名ユーチューバーのチャンネルに出演すると言ったことが頻繁に起こっています。
これはテレビと同等、もしくはそれ以上にyoutubeという媒体が強い力を持っていることを示しています。
つまり、Youtubeの台頭によってTV出演の価値が下がり、アーティストはわざわざ活動の自由度を事務所に奪われてまでタイアップを取らなくても、YoutubeやSNSを駆使すればメジャーと同等に戦える時代になってしまったのです。
Youtube、SNSが普及したことは間違いなくアーティストの事務所離れの一端を担っています。
既にある程度のファンが付いているアーティストからすると、事務所に入るメリットがあまり見当たりりません。
昔は事務所に入らずにヒット曲を世に送り出すということは殆ど不可能でした。
それは個人で楽曲やMVを発信していく媒体が存在していなかったからです。
ところが2020年のヒットチャートの上位には、全く無名の個人のアーティストが食い込んでくるようになりました。
瑛人さんの「香水」、優里さんの「ドライフラワー」、川崎鷹也さんの「魔法の絨毯」はいずれもSNSで火がつき、それまで世間的には殆ど無名だったにも関わらず、彼らは音楽シーンの最前線に躍り出ました。
このように、個人でもいくらでもヒット曲を世に送り出すことが出来る時代になったことで、事務所に所属するメリットが今はとても少なくなってしまったのです。
YoutubeやSNSの普及により、アーティストの事務所離れが進んでいると書きましたが、それでは事務所に所属する必要はないのかというと、あながちそうとも言い切れないと思います。
確かに、事務所に入らなければ出来なかったことの多くが個人でも可能になってきていますし、昔に比べたら事務所に入るメリットは少なくなったと思います。
それでもやはり、音楽事務所にはアーティストを育てて売り出していくことに長けたプロデューサーや社員が沢山いますし、事務所に入らなければ得られないコネクションというものは存在します。
また、何でも個人で発信出来てしまうというのは裏を返せば物凄く危険なことでもあります。
ミュージシャンに限らず、多くの著名人が、何気なくツイッターで呟いた一言で大炎上している様を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
YoutubeもSNSも正しく使えば、この上ない宣伝ツールなのですが、一歩間違えると、このようにネットで大炎上を起こし大きなマイナスプロモーションに繋がりかねません。
大炎上とまではいかなくても、音楽は良いのに、SNSで変なことばかり書いてマイナスプロモーションをしているアーティストが多い印象です。
そういうアーティストほど、事務所に所属してSNSを管理してもらうべきです。
セルフプロモーションというのは本当に難しいです。
自分自身を商品として客観的に見ることが出来ているアーティストは実際かなり少ないと思います。
これからプロを目指したいという方は、どんどん積極的にyoutubeやSNSを使って自身の音楽を発信していくべきだと思いますし、自分で出来ることはしっかりと自分でやるというスタンスは大切です。
その中で、縁が合って事務所に入るチャンスがあった場合、ちゃんとした事務所かどうかの吟味は必要ですが、信用できる事務所であるなら所属してみるのはアリだと思います。
事務所や音楽関係者の見分け方について詳しく書いた記事もあるので、こちらも良ければ参考にしてみて下さい。
事務所に入ることで学べることも沢山あります。
人脈も広がりますし、事務所で活動した後に独立しても良いわけです。
基本的には事務所も若手を育てて売り出したいと考えているので、年齢が上がれば上がるほど事務所に入りにくくなります。
ですので、若いうちに良い事務所に入れるチャンスがあったら、そのチャンスは逃さない方が良いかもしれません。
仮に、思ったよりCDが売れなくて事務所をクビになったとしても、いくらでも自力で挽回出来る時代でもあるのですから。
ただでさえ、アーティストの事務所離れが進んでいる中、コロナウィルスの蔓延は更に音楽事務所に大きなダメージを与えました。
これは事務所に限った話ではありませんが、音楽業界全般において収益の大きな柱である「ライブ」が出来なくなったことにより、以前のように製作やプロモーションにお金をかけることが難しくなってきました。
音楽事務所は所属アーティストに、十分なお金を投資することが今まで以上に出来なくなってしまったのです。
従ってアーティストはやはり「事務所に入るメリットがない」となるわけです。
この先、事務所とアーティストはどうなっていくのか。
恐らく、アーティストは自分で出来ることは自分でやり、出来ない部分を事務所にお願いするという、「完全に所属」という形ではなく、業務委託のような関係性が増えていくのではないでしょうか。
ライター:kato
2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka
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