新型コロナウィルスが日本に蔓延し一年半が経ちました。
しかし、未だに収束の目処は立ちません。
大型のコンサートだけに留まらず、小、中規模のライブハウスでのライブも「不要不急」だと世間からは罵られ、ライブハウスは営業自粛を余儀なくされました。
この一年半で本当に沢山のライブハウスが閉店してしまいました。
コロナウィルスが蔓延し、ライブハウスはどこのお店も配信機材を導入し配信ライブや人数制限を設けたライブで何とかお店を維持していました。
しかしながら、今年に入り「デルタ株」の流行で東京をはじめ全国でコロナウィルスの感染者が激増。
今も尚、第5波の脅威に晒されています。
全国のライブハウスでのクラスターも再び起こり始めています。
今回の記事ではこのコロナ禍でのライブの開催の是非について考えていきたいと思います。
野外音楽フェス「フジロックフェスティバル」(以外、フジロック)は今年の8月22日からの3日間、有観客でのフェスを開催し、3日間で延べ3万5449人を動員しました。
2019年のフジロックの来場者数は13万人ですので、なんと動員は3分の1以下なのです。
人数制限に加えて今年のフジロックでは、
・観客に対する検温実施
・マスク常時着用必須
・場内での飲酒禁止(アルコールの持ち込みも禁止)
・ライブ中の間隔確保
・抗原検査キットの無料配布
ここまで感染対策を徹底していました。
それでも開催日の前日の19日、開催地の新潟では過去最多の感染者数を記録し、医療逼迫が懸念される中でのフジロック開催には多くの非難の声が寄せられました。
SNSではフジロックを擁護する声もある中、フジロックの開催や、それに出演したアーティストへの非難の声も多く目につきました。
今回、フジロックはYouTubeでライブ配信を実施。誰でも無料でライブを視聴することが出来ました。
それもあってか、現場の映像を観たリスナーからは「密じゃないか」という声が相次ぎました。
オリンピックもパラリンピックも基本的に無観客での開催となっている中での、大型フェスの有観客での開催に対して非難があるのは当然でしょう。
今年のフジロックは出演を辞退するアーティストが続出という異例の辞退となりました。
そんな中、参加を決めたアーティストたちも複雑な胸中をそれぞれのSNSやホームページで綴っていました。
ロックバンド「GEZAN」のボーカル、マヒトゥ・ザ・ピーポーさんは自身のコラムで、
「わたしはアーティストだ。音楽で生計を立てている。会社員が電車に乗って出勤するのと同じように、わたしは現場にいき、音を鳴らす。それが仕事だからだ」
と綴っていました。
それは本当にその通りだと思うのですが、テレワークの会社も増えている中、ライブもやはり無観客で開催という手段もあったのではと思ってしまいます。
今の日本の中途半端な自粛要請では、個人も企業も文化も全て壊れていってしまうと思います。
そんな中でフェスの主催者、出演したアーティストたちが自身の生活、携わるスタッフの生活、音楽の文化を守りたいという気持ちでいるのも痛いほどにわかります。
どちらが正しいという話ではないのでしょうが、個人的には出演したアーティストに非難が殺到してしまうようなイベントでは、無事に終えられたとしても、果たしてそれは本当の意味で「成功」と呼べるのかと疑問に感じてしまいました。
愛知県常滑市の県国際展示場で開かれた音楽イベント「NAMIMONOGATARI(波物語)2021」では、感染対策が徹底されておらず、観客は密集し、酒類も提供していたということが発覚しネットで大炎上しました。
愛知県は、参加した県民に行動自粛要請をすると共に、無料でPCR検査キットを配るまでの事態に。
定員が5000人の会場に8000人が来場し、ソーシャルディスタンスは一切守られず密な状態で、しかも飲酒まで行われていたというのだからもう非難轟々です。
主催会社の代表は、
「イベントをやめたらつぶれてしまう。酒も、売らないと損失をかぶるので売らざるを得なかった」
と釈明しました。
この波物語の炎上事件で一番悲しいのは、全ての「音楽フェス」や「ライブ」というものが世間から、こういったモラルの低い人々や環境の中で行われていると誤解されてしまうことだと思います。
個人的にはフジロックの有観客での開催を「是」と言い切ってしまうのも難しいところですが、それでもフジロックは出来る限りの感染対策をし、しっかりとルールを遵守して行っていました。
徹底的な感染対策をして、ルールを遵守して行われたフジロックでさえ非難が相次いだのですから、今回のMAMIMONOGATARIの件に関しては痛烈な非難を受けて然るべきでしょう。
ラッパーでシンガーソングライターのSEAMOさんは自身のTwitterで、
「あれやられたら僕らの苦労が一瞬で水の泡」と投稿。
他にも多くのミュージシャンがNAMIMONOGATARIに対する非難の声をあげていました。
有名、無名問わず全国の「音楽」を生業にしている人たちはこのコロナ禍を何とか乗り越えようと、苦境の中でも国が定めたルールを守りながら必死に戦ってきました。
それでもやはり世間からは「音楽」や「ライブ」というものは相変わらず「不要不急」という認識で、大変厳しい状況が続いています。
そんな中で、このようなルールを無視したイベントが行われると「ライブ」というものに携わる全ての人が世間の敵になりかねません。
このような誤ちが二度と繰り返されないことを願うばかりです。
コロナ禍でのライブ開催についての是非は非常に難しい問題です。
日本での大型フェス、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021は開催中止。
西川貴教が発起人としてスタートした大型フェス「イナズマロック フェス」も先日中止を発表しました。
9月には都市型ロックフェス、サマーソニック2021がスーパーソニック2021と名前を変えて、東京会場限定で開催を予定しています。
一年前の状況でしたら、筆者はルールを守って出来る範囲で音楽という文化を壊さぬようにイベントは続けていったら良いと考えていました。
しかし、今年に入ってからデルタ株の流行による感染爆発を目の当たりにし、少し考えが変わりました。
東京では深刻な医療崩壊が進んでいます。
正直、この状況で「人を故意に集める」イベントを「良し」とはどうしても思えなくなってしまいました。
イベントを行いたい気持ち、イベントに行きたいお客さんの気持ちは痛いほどわかりますが、医療逼迫する病院で働く人たちが、こうした娯楽に率先して出かけて行って感染した人を治療しなければいけないことを考えると、いたたまれない気持ちになります。
しかし、勿論、音楽活動で生計を立てているアーティスト、そのアーティストの売上で生活しているスタッフ、ライブハウス、イベンター、音楽業界で働く人それぞれに生活があり、守らなくてはいけないものがあります。
可能であるなら、今は無観客での開催が良いのではと個人的には思いますが、有観客での開催でなくては採算が取れず大赤字になってしまうイベントもあるでしょう。
筆者はこのコロナ禍での有観客イベントに心から「賛成」ではありませんが、ルールを守った上で行われるライブイベントに対して批判的な気持ちもありません。
どちらが正しい、間違っているではないと思うのです。
それぞれが守るべきものを守るために、しっかりと考えて、その行動に責任を持って決断していくしかないのだと思います。
1日も早く、何の気兼ねもなくライブイベントを行える日が来ることを切に願います。
ライター:kato
2020年よりフリーライターとして活動。 @kato1155ka
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