今日のギター女子:Emily Remler(エミリー・レムラー)[記事公開日]2015年8月27日
[最終更新日]2015年08月27日
[ライター]森多 健司

Emily Remler Photo by Frans Schellekens / Redferns / Getty.

Emily Remler(エミリー・レムラー)は1957年ニューヨーク生まれのジャズギタリスト。1990年死去。享年32歳。

来歴

10歳からギターを弾き始め、当時はジミ・ヘンドリックス、ジョニー・ウィンター等に影響を受けていたそうですが、16歳のころ現在でもジャズの名門として名高いバークレー音楽院に入学。そこで、ウェス・モンゴメリーやジョー・パス、マイルス・ディヴィスなどのジャズミュージシャンの強烈な影響を受け、ジャズギタリストとして開眼します。

その後、卒業後はセッションミュージシャンとして全米を駆け巡り、その後ニューオーリンズに定住。1978年にはハーブ・エリスに見いだされ、カリフォルニアのコンコード・ジャズ・フェスティバルにも出演しています。

1981年に1stアルバム「Firefly」を発表、その後は精力的にアルバムを発表し、1985年の「Together」ではラリー・コリエルとの共演も果たしています。

1990年、オーストラリアでのツアー中に心不全で突然に死去。薬物の常用が原因とされていますが、諸説あるようです。死後、遺作となるラストアルバム「This Is Me」が発表されています。


オーストラリアでのテレビ番組での演奏。

使用楽器

愛器として常に傍らにある存在がGibson ES-330。彼女の兄弟も所有していたらしく、一貫してアルバムジャケットに本人と一緒に写っているのが見て取れます。その他、曲によってはオベーションのエレクトリック・アコースティックギターも使用。音楽性の幅をフュージョン方面に大幅に広げていた最後期には、当時の最新鋭であるカシオのシンセギターPG-380なども使用しています。


Ovationのエレアコを使ってのソロギターパフォーマンス。圧巻です。

Emily Remlerのここが聴きどころ

紛れもないジャズ・ギタリストではありますが、ジャー・パスのようなビ・バップを強く感じさせるスタイルではなく、最大の影響元でもあるウェス・モンゴメリーを強く感じさせます。特にV7時での音使いや、ソロの後半にオクターブ奏法を持ち込んでくることが多いところなど、随所にウェスを感じることができます。他にはハーブ・エリスの影響も強く、「Blues for Herb」という曲を書いたりもしています。ジョニー・ウィンターなど、ロック系ギタリストの影響も少なからず受けているようですが、その雰囲気はあまり感じられません。


こちらも同じく、テレビ番組での一幕。

80年代のプレイヤーとしては珍しく、スタイル的には古風な王道のジャズギタリストと呼べるものです。彼女と同世代でもあるパット・メセニーやマイク・スターンと比べると、いかにも”普通のジャズ”の雰囲気が漂っていますが、プレイヤーとしての存在感は両者と比べてひけを取るものではなく、20代にしてすでに完成されたものを持っています。

曲やフレーズの流れによっては、ウェス的な表現にとどまらず、ジョージ・ベンソンばりに高速でアルペジオを連射したりもしています。テクニックも並ではない証拠と言えますが、彼女のギターの本質的な魅力はそこではなく、そこはかとなく感じられる歌心にあります。ただ淡々と弾くのではなく、語りかけてくるようなギターの歌い回しや、暖かみのある音色など、言葉で言い表しにくい部分が何とも言えない魅力となっており、今となってなお根強いファンが付く理由ともなっているのでしょう。

死後に発表されたラストアルバム「This Is Me」にはそれまでとはちがう、大幅にフュージョン、スムースジャズ方面にシフトしたサウンドを聴くことができ、方向転換を図っているのがはっかりと分かります。その後また新しいサウンドを生み出そうとする中での死でした。やはりそのまま生きていれば、と願わずにはいられません。

http://allthingsemily.com
ファンサイト。英語ですが、非常に充実しています。

ライター:森多 健司

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