「信州ギター祭り」は、長野県にゆかりのあるギターメーカーが集まる展示即売会です。長野県にはギターメーカーが集中しており、ギター生産数では国内一位。2回目の開催となった今回は11月13、14、15日の3日間(13日は業者のみ)、10社13ブランドが参加しています。約150本の国産ハイエンドモデルがずらりと並ぶ、まさに「群雄割拠」の展示会。ここには、良いギターしかありません。SNSを積極的に活用したプロモーションも手伝い、来場者のうち6割は県外からとのことでした。
試奏用のピックを除菌するなど、いろいろな対策が取られていました。
あのイベントも中止、このイベントも中止。そんな2020年の渦中、日本中から人を呼ぶイベントを開催したのは、勇気ある決断でこそあれ単なる蛮勇ではありません。参加者の検温、手指の消毒、マスク着用など各種の対策に加え、開催時間を90分ずつ区切った「予約制」で開催されました。これによってうまく人数制限ができ、また来場者を分散させて、各時間帯で平均して落ち着いたイベントにできたわけです。
当サイト取材陣もこのルールに従い、90分という限られた時間内に全10社を取材しました。1社あたり約8分という短い取材を次々と10回行う感じでご紹介していきます。なお、掲載順はカタカナ読みの50音順です。
これまた美しく整ったトップ材の「MAF-8220GP」
「AP II」は、アリアプロIIの上位ブランドとして2年前に立ち上げられました。国産ハイエンドモデルながらしっかり価格を抑えているあたり、さすがアリア。「同価格帯ならウチが最強」のパワーワードに偽りなしです。名古屋に本社を構えるメーカーではありますが、長野県の伝説的なギター工場「マツモク(松本木工)」を運営した歴史から、今回の出展につながりました。
ギターでは「MAF」シリーズを中心に展示しています。一本一本でボディ材、指板材、ピックアップ配列など仕様にバリエーションを持たせており、その違いを楽しむことができます。
価格には超絶シビアなアリア。国産でこの仕様で、本当にこの値段でイイのか?
自然が作り出す美しいストライプ。ナナメのグラデーションが面白い。
ベースのショーモデルでは、さまざまなトップ材が楽しめる。
ギターの好みは人それぞれとはいえ、アリアスタッフの人気投票で1位になったというこの一本。マッチングヘッドの、とても良い面構え。こりゃ良いギターだ。
アルダーボディ、キルトメイプルトップ、パーフェロー指板という組み合わせ。ピックアップはアリア・カスタムショップのオリジナル。トーンポットのプッシュ/プルでコイルタップを起動します。野獣のようなこのルックスならやはりロック系に使いたい感じですが、太い音も細い音も自在で、ジャンルを選ばない素直なサウンドを持っています。
同価格帯ならウチが最強です:荒井貿易訪問インタビュー – エレキギター博士
優美なヘッドロゴ。柔軟な製品企画でいつも驚かせてくれるメーカーさんですが、今回のもかなり斬新。
「エルズトラスト」は東京に工房を構えるメーカーですが、いち時期こちら長野県でギター製造に携わるご縁があったということで出展。性能やサウンドは当然として、尖った仕様を柔軟に採用する製品企画が魅力です。
今回は一本だけ出展。買い手がついてしまったとのことで、試奏はできませんでした。残念。音が聴きたい。
展示されたこのギターは長野の県鳥ライチョウをモチーフに、和太鼓で使用される欅(ケヤキ)製のボディに「波あじろ」に編んだ竹を2Pで貼り付けています。ケヤキも竹も、長野産です。
ピックアップを受け止めるエスカッションは、指板やブリッジに多く使われる人口エボニー「リッチライト」の削り出し。木材よりも剛性にすぐれ、高い安定度があります。
ボディのバインディングはキラキラしていますが、指板のバインディングはブラック。ビシっと黒いエスカッションの付いたボディに比べて全体に淡い色調のネックが、ココでキュっと引き締まるというデザインです。
農園に工房を併設しているOGI FACTORY。このイベントでブランドのお披露目です。「りんご」を平仮名で表記しているところもポイント。
りんごの木の可能性に挑戦する「オギ・ファクトリー」は、今回の出展でブランドのデビューを飾りました。りんごは水分の多い木材で楽器に使用された例がほぼなく、可能性は未知数です。今回は、ご実家の農園から伐採したりんごの木をトップ材に使用した、オリジナルモデルを展示しています。
代表の小木曽さんは長らくギター製作学校の講師として勤め、昨年独立して工房を立ち上げたとのこと。自動機に頼ることなく、お一人のガチ手作業で全工程を行っています。
マホガニーボディに化粧板としてりんごを使用。うっすらと茶色を加えてはいるが、ほぼ木材の雰囲気をそのまま出しているとのこと。「りんご」という表記のかわいらしさとは裏腹に、立ち上がりの鋭い力強いサウンド。こういうギターは、力いっぱいガンガン弾きたい。
ボリュームポットの抵抗値をリアのハムバッカーに合わせていることもあって、トレブルの響きが豊かなフロント&センター、パリっと抜けてくるリア、というサウンド。トーン全開で弾くと、モダン系ハイエンドモデルでは逆になかなか得られにくい、適度なジャリ感のある暴れる感じのサウンドが得られます。このジャリ感はトーンを絞ってもしっかり残ってくるので、甘くても抜けの良い上質なトーンや、ギャンギャン吠えるような凶暴なトーンが得られます。
国産ハイエンドなら常識なのでしょうけど、フレットとバインディングの境界線の美しいこと。
ボディ同様にりんごの化粧板を貼り付けたマッチングヘッド。りんごの木は木目の主張こそあれ、アッシュほどキツくない、柔らかな雰囲気が新鮮な印象。
大爆発!といった感じの豪快なトップ。こういうのを平然とやってのけるのが、スギの凄さ。
木材、性能、サウンド共に比類なきクオリティの高さを誇る「スギ・ギターズ」。どのギターにもとっておきの木材が使用されており、見ているだけでうっとりとします。眼福とは、まさにこのこと。
比較的オーソドックスなスタイルの「SH485」。ホロウ構造のボディにより、かなりの軽量。
複雑な杢だが、「リアピックアップ地点で水平」がひとつの様式美。
半分だけスポルテッドの、珍しい模様。
エイジドのブラックは、精悍な印象。
「パッシブ」にこだわり続けてきたSugiだが、遂にアクティブ仕様も登場。
長野のイベントということもあり、山の稜線をイメージしたヘッドデザイン。
キリっとしたブラックの4弦。こちらもアクティブ仕様。
このほどボディをリシェイプしたというヴィンテージ・スタイル「SGZ」。ボディエッジが直角気味で、エキゾチックメイプルのドロップトップ仕様というモダンなテイストに仕上がっています。ヒールカットも採用され、ハイポジ余裕の演奏性。ボディはトップ材とボディ材の間に0.5mm厚の黒い薄板を挟み込んだ、3層構造になっています。外観は現代的ながら、ボルトオンモデルでSugiがこだわっている「250R」という指板の弾き心地には、古き良きヴィンテージモデルの味わいがあります。
ヘッド形状が総じて可愛らしいのも、Sugiの魅力。
《将来ヴィンテージと呼ばれるギターを創りたい》Sugi Guitars 訪問インタビュー – エレキギター博士
ライター:小林 健悟
「エレキギター博士」 「アコースティックギター博士」で記事を書いています。 ギター教室もやっておりますので、興味のある方はぜひどうぞ☆ The Guitar Road 郡上八幡教室のページ 松栄堂楽器ミュージックスクエア岐南のページ 春日井音楽院のページ - ギター教室navi
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