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超プレイヤー達の名カバー!ビートルズ編2016年5月19日 , ライター:森多 健司

91l7ue6WOhL._SL1500_ Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band

ビートルズはその史上空前の影響力から「世界で最も成功したバンド」とされていますが、今やあらゆるミュージシャンでその影響を受けていない人はいないほどの存在です。曲作りにおいてのエポックメイキングな発想もさることながら、その楽曲のレベルの高さがその最大の理由であり、イエスタデイやサムシングなどは世界最高のカバー数を誇ります。

しかし、その反面カバーの難しさから「アレンジャー泣かせ」と言われており、その理由として「元々のアレンジが秀逸過ぎる」、「原曲のイメージが強すぎる」の二点がしばしば挙げられます。今回はそんな中で、プレイヤーの個性と原曲の素晴らしさをうまく引き出した名カバーを数点紹介します。プレイヤーの個性が出やすいという点で、一つを除いてはインストゥルメンタルもので選んでみました。

A Day In the Life / Wes Montgomery

ロックの金字塔とも言われる「Sgt.Peppers Lonely Hearts Club Band」のアルバムラストを飾るジョン・レノンの傑作。原曲のアレンジが強烈すぎてカバーの難しい一曲ですが、ジャズギタリストの大御所、ウェス・モンゴメリーのこのバージョンは有名です。

原曲の特徴でもある、ベースが下降するコード進行を放棄し、ワンコードの怪しげなモードものへと変貌。ハービー・ハンコックの独特のボイシングが怪しさに拍車をかけます。後ろには時折派手に登場するストリングス・セクション。原曲に残るおどろおどろしさを大胆に誇張した名カバーといえるでしょう。この曲はアルバムのタイトル曲となっており、同アルバムには「Eleanor Rigby」も収録。ウェスが純粋なモダンジャズから離れて、イージーリスニング路線へと転向する契機ともなった一枚です。

A Day In the Life / Wes Montgomery(YouTube)

She’s A Woman / Jeff Beck

元はシングル盤「I Feel Fine」のB面曲として登場し、現在では「Past Masters Vol.1」で聴ける、ポール・マッカートニー作の一曲。本人曰く黒人っぽい作風を目指した軽快なナンバーです。

ジェフ・ベックのバージョンは名盤「Blow By Blow」に収録。リズム、構成などを大胆に変更し、原曲の軽快さをそぎ落とした上で、ウラを強調した部分やコード進行の特徴のみを最大限にデフォルメ。もったりしたブルージーなリズムの曲へと変貌しました。トークボックスを交えた、おちゃらけたような雰囲気には、フェイザーの掛かったエレピも一役買っています。

She’s A Woman / Jeff Beck(YouTube)

Blackbird / Bireli Lagrane, Sylvain Luk

アルバム「The Beatles(ホワイトアルバム)」収録のこのナンバーは、今やアコギのアンセム。アコースティックギターを少しかじった人であれば、一度は弾いてみたいと思う一曲で、ポール・マッカートニー自身、今でもライブでは欠かさず演奏しています。

ビレリ・ラグレーンとシルヴァン・リュックは二人ともフランス生まれのジャズギタリスト。アルバム「Duet」に収録されており、このアルバムは通してギターデュオ作品の最高峰とも呼べるものに仕上がっていますが、「Blackbird」は中でも秀逸の出来です。原曲のリズムを大胆にアレンジ、柔らかなサウンドが全編を支配しており、黒ツグミが悠々と滑空していくかのような雰囲気は原曲以上に感じられます。二人のギターの表現力がそれを可能にしていることは言うまでもありません。

Blackbird / Bireli Lagrane, Sylvain Luk(YouTube)

Taxman / Stevie Ray Vaughan

アルバム「Revolver」の冒頭を飾るジョージ・ハリスンの一曲。ひっかけたような16ビートの上で「1があなた、残り19は私のものですよ、なぜなら私は税金取り」と歌う、強烈に皮肉の効いたナンバーです。

元々サビを除いてD7のワンコードで進行する曲ですが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンのバージョンは、完全に彼の雰囲気で染め上げられた印象があります。コード進行は元来の7th系の響きをさらに押し出し、ブルースを基調としたものへ。リズムは彼の最も得意とする攻撃的な16ビートスタイルへと変化を遂げています。メロディの崩し方はまるでソウルシンガーのカバーのよう。オリジナルと比べると歌詞以外はほとんどオリジナルのような雰囲気で、ギターソロでは相も変わらぬレイヴォーン節が惜しげも無く登場します。

Taxman / Stevie Ray Vaughan(YouTube)

Strawberry Fields Forever / Andy Timmons Band

プロデューサー曰く「自分の人生で最高のシングル盤」を成した、ジョン・レノンの名曲。現在ではアルバム「Magical Mystery Tour」に収録。サイケな雰囲気をまとった万華鏡のような一曲です。

アンディ・ティモンズは自他共に認めるビートルズフリークですが、2011年、アルバムを丸ごとカバーする「Plays Sgt.Pepper」を発表。その中のボーナス的一曲としてこの曲が収録されています。原曲のあらゆる楽器をギター1本とリズムのみで再現しようとする試みは、ギターという楽器の特性をフルに引き出さねばならず、名手アンディ・ティモンズだからこそ可能な作業でしょう。原曲のフリークだけあって、アレンジは非常に原曲に忠実。それだけにファンぶりが露呈されて微笑ましくもあります。

Eleanor Rigby / Stanley Jordan

原曲はアルバム「Revolver」収録。プロデューサーのジョージ・マーティンによるオーケストレーションが見事で、バンド演奏は一切入らない、ロックバンドとしては異色の一曲でもあります。

スタンリー・ジョーダンはタッピングによる両手タッチ奏法で、ギターをピアノのように操る、独自のスタイルを築いている唯一無二のギタリスト。このカバーは「Magic Touch」というアルバムの冒頭を飾っており、原曲の持つ空虚さを引き出した上で、独特のスピード感を持つスリリングなナンバーへと変貌を遂げています。Bメロのコード進行が原曲を踏襲せず、ジャズっぽい響きを生かしたものにリハーモナイズされている辺りは、ジャズギタリストとしての面目躍如。

Eleanor Rigby / Stanley Jordan(YouTube)

Here, There And Everywhere / 村治佳織

「Revolver」に収録されたポール作のバラード。シングルというわけでもベスト盤に入っているわけでもないのに、そのメロディの美しさゆえに特別にファンの多い一曲で、カバーバージョンは世界中に溢れかえっています。このバージョンでは、クラシックギター元来の素朴な音色と、時折垣間見えるハープのような華麗さがあいまって、原曲以上に透き通った雰囲気を感じることが出来ます。クラシック畑に持ち込まれていながら、原曲の良さを失っていない、武満徹のアレンジも見事。

村治佳織は日本を代表する女流クラシック・ギタリストですが、彼女は他にもビートルズの曲を数多く演奏しています。筆者はこの「Here, There and Everywhere」を一度コンサートで実際に聴いたことがありますが、それはもう素晴らしい演奏でした。

Here, There And Everywhere / 村治佳織(YouTube)

Norwegian Wood / Victor Wooten

最後はギタリストではなく、ベーシストですが、ヴィクター・ウッテンによる名カバーを紹介。原曲は「ノルウェーの森」という迷(?)邦題で知られた、ジョン・レノンの作品。非常にカバーの多い曲で、12/8のアコギとシタールの響きが心地よい一曲です。

ヴィクターのこのバージョンは、黒人らしいハネたような雰囲気のリズムにハーモニクスを絡めた、独特にして大胆なもの。原曲のもつ異国情緒溢れる透明感をハーモニクスで表現し、大胆にリハーモナイズしたコード進行を持ち前のリズム感で料理したカバーは、まさに唯一無二の一品です。世界最高峰のベーシストの表現力が堪能できるでしょう。

Norwegian Wood / Victor Wooten(YouTube)

まとめ

ロックからジャズ、クラシックに至るまで、ビートルズの曲はあらゆる場所でカバーされています。それぞれそのジャンルならではの良さがありますが、そんな中でも原曲のイメージを生かしたものから、プレイヤーの解釈が個性的な尖ったものまで、さまざまに存在します。

ビートルズの場合は記事冒頭に挙げた2つの理由もあり、尖っている物が結構多いような印象を受けますね。名プレイヤーたちの個性が原曲との比較で浮き彫りになるところも、またカバーの面白さと言えます。

ライター:森多 健司

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