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ロックギタリスト達の奏でるアコースティック名曲特集2016年2月14日 , ライター:森多 健司

アコースティック名曲

日頃エレキギターで速弾きをしまくっているロック系ギタリストですが、バンドの曲の中では一服の清涼剤的な役割としてアコギが登場することも珍しくありません。今回は90年代以降のハイテクニック・ギタリスト達のアコースティックギターの名曲にスポットを当てたいと思います。

Ain’t Seen Love Like That(MR.BIG)

Gt:ポール・ギルバート

MR.BIGのアコギと言えば「To Be With You」という流れに逆らい、敢えてのこの一曲。3rdアルバムの「Bump Ahead」収録。目立たない一曲ですが、名曲度では全米No.1の「To Be With You」に劣ることはありません。イントロが16分音符のコードアルペジオから始まり、ギターソロでもアルペジオの応酬で、まるでアコギをフラットピッキング・アルペジオするための練習曲の如しです。さりげなく聞こえますがやってみると相当難しく、さらりとこなしているのはさすがに巧みなピッキングテクニックを持つポール・ギルバートならではと唸らされます。

このアルバムには他にもシングルになった「Wild World」などが含まれますが、同じくアコギのバラードとして、こちらの方が好きという人は少なくないでしょう。まさに隠れた名曲といった存在です。

Ain’t Seen Love Like That / MR.BIG – YouTube動画

The Silent Man(Dream Theater)

Gt:ジョン・ペトルーシ

アルバム「Awake」収録。アルバム中盤「Erotomania」より始まる、Mind Beside Itself組曲のラストを成す小曲ですが、ヘヴィで暗鬱なアルバム内の世界観の中で、心が安らぐ一曲という立ち位置にあります。内容は「Erotomania」の一部分をアコギで弾きながら、それにメロディを付けたようなものになっていますが、全く違和感を感じないどころか見事な関連性を感じさせるところは、さすがとしか言い様がありません。間奏部分にはお決まりの変拍子も挟まりますが、あくまでさりげなく。ギターソロはガットギターの響きで優しい雰囲気を出し、そんな曲の世界観を完璧に引き出すジェイムス・ラブリエのボーカル、バックに流れる弦の響きも素晴らしいの一言です。

ドリーム・シアターのアルバムではアコギがメインを張る小曲が少なくないため、ジョン・ペトルーシはエレキギターにピエゾPUを付けてアコギっぽい音が出るようにしています。アルペジオの際にはエレキのクリーントーンとアコギの音を混ぜるというアプローチも多々見られ、曲を支配するキーボードとは違う部分でのサウンドを作り込んでいるように見受けられます。

Hole Hearted(Extreme)

Gt:ヌーノ・ベッテンコート

エクストリームのアコギと言えば「More Than Words」ですが、これもあえて逆らって、アルバム「Pornograffitti」のラストを飾るこの一曲。エレキのリフを無理矢理アコギで弾いているような無骨なイントロ、少し乾いたようなメロディから放たれるアメリカンな香りが非常に印象的で、名盤視されている同アルバムの中でもひときわ異彩を放っています。ヌーノ本人は非常に気に入っているようで、ライブではラスト近くやアンコールなどでほぼ確実に演奏される一曲です。ライブでも原曲同様、律儀に12弦ギターを使用していますし、このストロークの分厚いサウンドが、淡々としたボーカルとの対比としてやはり重要な役割を果たしていると言えそうです。おかげで、コピーの際には通常の6弦でもう一つ迫りきれないところが悔しいところ。

ヌーノはアコギを弾いていることが存外に多く、4thアルバムには「Midnight Express」というアコギのインストが収録されていますが、これはエクストリーム最初期からライヴでソロタイムに弾いていたものに題名を付けて収録したものです。

Rain(Harem Scarem)

Gt:ピート・レスペランス

この中でも知名度が少し落ちる一曲ながら、全くひけをとらない名曲。アルバム「Believe」収録。ハーレム・スキャーレムは90〜00年代を通じて特に日本では人気のあったカナダ出身のメロディアス・ハードロックの雄で、メロディアスで親しみやすい楽曲とハードなサウンドを見事なバランスで両立させていました。この曲もその例に漏れず、非常に美しいメロディが光っています。ピート・レスペランスのギターはあくまで優しいタッチのストロークに終始しますが、ギターソロではマイナー調になる雰囲気を固めのピッキングでうまく表現しています。ピートの奏でるギターソロはどの曲も構築度がすさまじいのが特徴。完璧に楽曲にマッチしたハイテクニカルなソロを余裕で弾きこなすそのテクニックも相俟って、いちギタリストとしても人気があります。この「Rain」にはバンド・バージョンもあり、そちらではアコギとは違うエレキの流麗なソロを聴くことができます。

バンドは優れた楽曲を多々生み出しながら、セールスが振るわなかったせいか、パンクみたいな路線に行ったり、また戻ったりしながら迷走の末、解散。その後再結成しますが、昔の音源を再録してみたり、未だに軸足を固定し切れていないようです。90年代に生み出された名盤のような優れたアルバムを期待することはもう難しいのでしょうか。

まとめ

エレキギターとアコースティックギターは楽器的にはほぼ別物ともいえるほど違う特徴を持っていますが、エレキが抜群にうまい人は大抵アコギもうまいものです。この4曲もその例外に漏れず、素晴らしいアコギのテクニックを聴くことができます。似たような曲を揃えてまとめて聴いてみるというのも面白いかもしれませんね。それにしても上にYouTube動画を並べてみると、全部モノクロですね。この時期のPVはモノクロが流行っていたのでしょうか。偶然とはいえ、謎です。

ライター:森多 健司

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